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感想・レビュー・書評
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哲学者・千葉雅也の三部作の3作目。
『勉強の哲学』『現代思想入門』、そして本作。
本作は芸術論だ。
「リズム」「差異」「反復」などをキーワードに芸術作品の見方を解説。このへんの説明のうまさには感心。
中盤からドライブがかかってきて、とくに後半が面白かった。
とくに、「下手」と「ヘタウマ」を、「モデルに対して届かないズレ」と「モデルに対して「余っている」ようなズレ」と言い換えているところなど、あまりに的確過ぎて気持ちがよかった。
次の一節など、壁にでも貼っておきたいくらい。
「目指すものへの「足りなさ」をベースに考えると、それを埋めるようにもっとがんばらなきゃという気負いが生まれ、偶然性に開かれたセンスは活性化しません。それに対して、「余り」をベースに考えれば、自分の理想とするものにならなくても、自分はこういう余らせ方をする人なんだからいいや、と思えるわけです。それは自分に固有の足りなさだとも言える。ですが、それをもっとポジティブに捉えてみる。その方がより創造的になれると思います。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
センスという言葉に囚われている自分にとって、たいへん面白かった!
「芸術は人生の多様性や相対性を教えてくれる」という言葉が一番刺さった。
センスという言葉を哲学することで、芸術だけでなく自分の人生が豊かに見えてきた。
まず意味から離れて、リズムやうねりとして捉えることが必要である。
肩の凝りを丁寧にほぐすようにセンスとは何かを読者に寄り添い解き明かしてくれる。
そしてそのセンスを越えた向こうに見えてくるものがなんとも愛おしいではないか。
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よく「あの人はセンスがいい」ということがあるが、そもそも「センス」とはなにか、どのようにセンスを鍛えられるのか、ということにずっとモヤモヤしていた。タイトルで本書を即購入。
「文化資本の形成とは、多様なものに触れるときの不安を緩和し、不安を面白さに変換する回路を作る」、「センスとはヘタウマ(再現がメインではなく自分自身の線の動きが先にある」、「予測誤差がほどほどの範囲に収まっていると美的」など、「なるほど、そういう捉え方があったか」と、人間が遊ぶ理由や美に惹かれる理由まで踏み込んでおり哲学的。進化論や文化人類学、脳科学にも基づいているようなアプローチをしている。絵画の見方も分かりやすく解説されており、予想以上に充実した内容。とても勉強になった。 -
センス=意味や目的から脱した直観的な把握
それそのものを把握↪︎リズム
リズムとは0→1のビートとそれに至るうねりである。
意味もリズム(距離)で捉えられる。
模倣からの逸脱がセンスの第1歩
鑑賞は自分自身にリズムを持つこと
面白いリズム→反復の中で適度な差異を持つ
不完全な技術とそこから生まれる偶然性の結果が自分の能力だ。
丁寧な暮らしとはビートの中のうねりを楽しむもの
自分な好きな物、生活をリズムで捉える
入門書で歴史を学び、個別の作品でリズムを楽しむ
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センスとは、作品の構成、色、線、質感などをリズムとして直観的に楽しむことができるということ。
リズムというのは、ある/なし、デコボコ、意味の対立、意味的な近さ/遠さ、というようものが一定の規則性をもって反復していること。
また、面白いリズムというのは、ある程度の規則性をもった反復の中に、適度なバラツキで予想を裏切ってくるもののこと。
アンチセンスというのは、それぞれ個人の身体性に起因する、癖ともいえる執拗な反復のこと。おそらく、これだけは譲れないというような、強いこだわりの事を指していると思う。
冒頭に「本書の狙いは、芸術と生活をつなげる感覚を伝えること」とあるが、芸術と生活の間には分断があるのではなく、目的的・無目的的、あるいは、反復・差異が、どのようなリズムで現れるか、ということなのかなと思った。 -
日常の自分の生活の中でも、十分にセンスを磨くことはできますよ!みたいな話(雑まとめ)。載ってたワークはこれからやります!
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千葉雅也さんの最近の本は、平易な言葉で書かれているから読みやすいけど、そのせいでよくわからない部分がある(特に第3章)。
センスが良くなるための第一歩は、何かモデルを模倣することから降りること。
次に、意味の前段階の「リズム」に注目すること。蓮實重彦『夏目漱石論』を読んで、その異質さに面食らっていたので、その解説としてすごくわかりやすかった。リズムの観点から、餃子とラウシェンバーグを描写してみせる部分が本書の白眉といえそう。
さらに進んで、「リズム」の中のビートとうねりを区別すること、意味についてもリズムを読み取ることという、かなり高度かつ実践的な鑑賞方法が手際よく解説される。
最後にセンスの悪さとされた、その人の無自覚などうしようもなさに回帰してくるあたりもグッとくる。
参考文献も読んでまた戻って来たい。 -
センスとはなにか、センスがいいとはどういう状態か、というのが本書のメインだが、個人的には創作論として自身の創作に反映できそうな考え方が多く、良い読書をしたなと思った。面白いと思うものにはリズム、有と無の繰り返しが必要で、ある種の遠回りや引き延ばしという「無駄」が大事であること。それを再確認できただけでも大きい。
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【あなたのセンスが良くなる本! 哲学三部作のラストを飾る一冊がついに誕生】センスとは何か、センスの良さを変えることはできるのか。絵画、小説、映画、美術など諸芸術を横断しながらその本質に迫る芸術入門!