奉教人の死 [青空文庫]

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  • 青空文庫
  • 新字旧仮名
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  • 時は慶長所は長崎、ある教会の前に半死半生の体であった『ろおれんぞ』は、伴天連達の庇護を受け、自身も僧となって美しく成長する。友人の『しめおん』はことのほか『ろおれんぞ』と睦まじく、二人が寄り添う様はそれを見る人々の心にも癒しを与えていた。三年ほど後、町方の信者の傘張の娘が妊娠し、相手は『ろおれんぞ』だと言い出す。二人の間には予てから噂があり、その段階では否定していた『ろおれんぞ』だったが、ついに教会から破門を言い渡される。『しめおん』は怒りのあまり『ろおれんぞ』を殴りつけるが、『ろおれんぞ』は『しめおん』を赦し給えと神に祈ったきり、教会を出て行ってしまう。程なくして娘には子が生まれ、『しめおん』はそのもとに足しげく通っては赤子の中に『ろおれんぞ』の面影を見出さんとして嘆いていたりする。そんな折、長崎の町を大火が襲い、傘張の家も巻き込まれる。火の中に取り残された子供を、駆けつけた『しめおん』も助けることが出来ず、これまでかと思われた時、『ろおれんぞ』が現れて業火の中へ飛び込む。子供は無事助け出されたが、『ろおれんぞ』には死が迫っており、更に実は女であったことが判明する。傘張の娘は嘘を認め、『ろおれんぞ』の死は誰からともなく殉教だと囁かれる。伴天連の経の声が響く中、『ろおれんぞ』は静かに息を引き取る。

    あまりにも美しく悲しい殉教の物語。そのため細かいことはまあいいか、とうっかり思ってしまうくらい。しめおんはともかく、伴天連衆がろおれんぞが女であることを誰も知らなかったというのは不自然だし、しめおんとか何だコイツと思う。て言うか本当はアンタの子なんじゃないのと思っていたのだが違った。そしたらより一層卑怯で良かったのに。とはいえ芥川が書きたかったのはそんなことじゃないんだろう。だから私はサイコパスが濁ってるとか言われるんだ。

  • 奉教人の死は名前だけ知っていた作品で、読むのは今回が初めての機会となった
    Wikipedia の黄金伝説の項目を信じるなら、この話の下敷きはれげんだおうれあ、なる奇書ではなく西洋の黄金伝説らしい
    しかしながら、本文は充分な気迫をもって長崎でのある奉教人の死を伝導している
    確かに、これほどのものなら、当時の読者に奇書れげんだおうれあを探し求める人がいたというのも無理はないだろう
    架空の本や手紙、証言を使う、という芥川の手法は物語に実体を与えるという点で成功している

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