最終戦争論 [青空文庫]

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  • 現代の戦争では、戦力は経済力に比例する。
    第二次世界大戦当時、アメリカ合衆国の経済力は圧倒的であり、日本の経済力とは比較にならなかった。
    日本は、最初っから、連合軍に勝てるみこみなど、全く無かった。

    したがって、皇道派(農本主義ファシスト)は、勝てそうな相手とだけ、短期決戦の戦争をするしかないと考えた。しかし、彼らは2・26クーデターを起こして鎮圧された。

    一方、日本を計画経済によって経済大国にすることは可能だと考えたのが、統制派(生産力ファシスト)だが、明治憲法にもとづく天皇中心の体制は、全面的統制を可能にするような権力の集中を妨げた。ゆえに、日本において、ファシズムは徹底できなかった。

    石原莞爾は、満州を領有すれば日本を大産業国家にできると考え、独断で満州事変を起こした。
    満州建国を開拓すること、満州移民・満蒙開拓により、アジアの五族協和(日・満・漢・蒙・朝)による実験的な重工業都市国家(王道楽土)の建設が可能だと考えた。
    その満州経済システムは、当時大躍進していたソヴィエト経済五カ年計画がモデル。ファアシズムは部分的に見れば、社会主義的だ。

    しかし、その満州経済のインフラを完成させたのは、石原莞爾ではなく、革新派官僚の岸信介(長州閥)だった。

    岸はドイツ式の重要産業統制経済モデルを導入。そのソ連+ドイツ折衷型の満州経済システムが、東条英機の下で大日本帝国の戦時統制経済(官僚主導型の計画経済)に姿を変え、戦後も生き延びた。

    石原は、日本が将来、経済大国になるまで、決して戦争をしてはならないと考えていた。

    つまり、皇道派も統制派も経済大国との戦争を拒絶していたのだが、ほとんどが政治的に失脚し、結果的に、短期決戦+包囲殲滅戦という戦法だけが受け継がれてしまった。
    これでは、戦争に勝てない。

    満州事変をきっかけに経済大国との長期的な戦争に突入していったとき、日本軍には「玉砕」という最低の戦法で、自国民を殺すことしかできなかった。アホである。
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    『最終戦争論』を読んでみて、とても単純な感想だけど、予言の部分がダメだと思った。
    国家の存亡の危機に、現人神とか、天皇とか、法華経とか、日蓮上人とか、そんな精神論を述べてる時点で、もう近代的な戦争に負けてる。
    そんな予言に頼って戦争しようとしてる時点で、もう圧倒的にダメだ。
    驚くべきことに、彼は、法華経のような大乗経典がブッダの言葉ではなく、後世に作られた物語であることを知っていて、このような予言を引き合いに出している。

    現代でもそうだけど、神道政治連盟とか日本会議、日蓮上人の予言みたいなものを引き合いにだすような政治的タヌキが現れたとき、日本は、何度でも滅びる。

    石原莞爾は東条なんかに比べて戦略家としてはずっと勝れていた、という話だけど、それが、こんなレベルだから、戦争にボロ負けしちゃうんだよ。

  • 日本とアメリカとの最終戦争か。
    頭いい人は考えることが違うなぁ。

  • 主に近代の欧州における戦争の特徴を,兵器の発達という観点と絡めて説くと共に,今後の世界情勢の推移を予測する.ここでは,ソ連・米国・欧州・東亜という四極による「準決勝戦時代」から,最終的には欧州対東亜という決戦に至ると読む.また戦争の形態が点から線,更には面と,時代を追うごとに次元を増してきたことに注目し,続く進化では立体になる,と述べている.
    最終決戦の後に世界平和が訪れる,という考え方は,世界を枢軸・連合などという形で二分して戦われた世界大戦を経験していた当時の人々にとって,ある種の楽観だったのかもしれない,と読める.航空機に関しての見通しなどは,Giulio Douhetの主張などとも通ずるところがある.しかし結局,当時の日本を支配していたイデオロギーや,欧米における戦争の文脈でしか,世界の趨勢を捉えられておらず,またイスラム世界については一切言及されていないなどといった部分が,今日から見ればお粗末に映ってしまうように思われる.

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