- 青空文庫 ・電子書籍
感想・レビュー・書評
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無数の色の魂が波に揺られて漂っている。描画が大変美しく目に浮かぶようで、これぞ純文学という感じです。最後はちょっとだけ背筋を撫でます。
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「月もなき無窮の夜空、あまたの星のきらめきて、横たはる天の河、ひときはさんざめく。風凪たれど、海ざわめきぬ。見渡せば、ざあと一つまた一つ押し寄せ来たる小浪(さざなみ)の、皆火のやふに煌めきぬ。黄泉(よみ)の國の美しさもかくあらむや。眞(まこと)に夢の如し。小浪浪間は漆黒なれど、波の穂の、金色を帶、漂ひぬ。」
何と東洋的な自然の見方をするのであろう。感嘆してしまう。
「嗚呼、我も夜光蟲の一匹(ひとつ)なり――無量の流れにありて、はかなく漂ふ燐光の一閃光(ひとつ)なり――わが思惟の變はるにつれて、發する光の色合いも變はるらし。時に深紅(ルビイ)に、また青玉色(サファイヤ)に瞬けり。今は黄玉色(トパアズ)、さらには翠玉色(エメラルド)に移らふ。この變化の何の故なるかを知らねども、人界の生命(いのち)の思惟は、おほかたは赤き色に光りたる。かたや天界の存在は――靈的至福のいづれも備へ――、その思惟は青色と紫色と趣深く燃えたちて、變化の妙を極めたり。
なれど、現世(うつしょ)のいずくにも白き光の見えざることぞ、不思議なりけり。すると、いずくともなく「天の聲」の聞こえてきて、語りき――。
「白き光は高貴な存在(もの)の光なり。夫(そ)れ何十億もの光を融合して作られん。白き光の輝きに奉仕するが汝の役目。何時の燃へる色こそ汝の価値(あたひ)となるべし。汝の生きるは一瞬なれど、その鼓動なる光は生き續けん。自らの思惟により輝きてゐるその刹那、汝、有り難くも「神々を作る者」の一人とならむ。」
人はそれぞれ固有の色を持っていて、見える人には見えるらしい。
その色は心の状態で変化もするものでもあるらしい。
小泉八雲は「白き光」を高貴な色としているが、仏教徒である私は「金色」を高貴な色として、捉えている。
色とは不思議なもので、それぞれの人は合う色、合わない色を持っているようだ。