燃ゆる頬,聖家族 (新潮文庫 ほ 1-1)

著者 :
  • 新潮社 (1947年11月1日発売)
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本棚登録 : 241
感想 : 16

初期の作品に触れられる一冊。例によって、ジブリ映画の影響で昔買った本を引っ張り出しているわけですが、映画「風立ちぬ」で、関東大震災が2人の出会いに大きく関連しているのは、麦藁帽子の影響があるのかも知れない。一方で、堀辰雄の小説の多くにおいて、結核なんかが描写されているだけで無く、生と死の境みたいなものが強く意識されるのは、震災の経験が影を落としていると見るのが自然かなと思う。
恢復期で「そんなに僕が生きていればいいと思いますの?」という疑問というものは、ある意味非常に傲慢で失礼である(が故か、これは、そう言えば良かったか、という形で示され、実際に言葉として発したわけではないと描写されている)が、この問いをぶつけられるほどの相手が居れば、実に、生きていることは当人の問題ではなくなるということである。つまり、自分は生きなくてはならないという制約が、世に存在するという認識を得る。
生きなくては、というのは、ちょっと無理か。こんなに簡単に死んでしまうような病気が蔓延している世界なのだから、生きようと努めなくては、であろう。ということで、話はif faut tenter de vivre.に戻ってくる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月31日
読了日 : 2013年8月31日
本棚登録日 : 2013年8月28日

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