入門書としてはかなり歪という気はする。中世スコラ学という時間的にも人員的にも膨大なものの入門書を、安易に造ろうとするなら人名と書名をズラズラと列挙するようなものにならざるを得ない。しかも研究そのものが行き届いているとは言えない状況では、山内氏の言う、避けて通るための図式を連発することになるだろう。それは避けたいというのは分からないでもない。とはいえ、これでは山内氏自身も自嘲的に語るよう「中世哲学入門」ではなくて「スコトゥスの存在の一義性入門」である。とにかくまたスコトゥスかよ状態なので、後半は正直うんざりした。大きな見取り図的なものを提供することに拘らず、つまみ食い的でもいいから、いくらでもあるはずの面白そうなトピックを紹介するような形の方が、入門書には相応しかったかも知れない。あと、トマスに対する言及がいくらなんでも少なすぎる。日本語で手軽に読めると縛りを掛けたなら、中世哲学よりトマ学の方が文献は多いような状況だから、あえてトマスはメインで扱わないという戦略はありだと思うが、さすがにこれは極端すぎるだろう。
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- 感想投稿日 : 2023年7月21日
- 読了日 : 2023年7月10日
- 本棚登録日 : 2023年7月10日
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