「とんち坊主」のイメージが強い一休宗純の、誕生から晩年までを丹念に描く坂口尚入魂の作であり、同時に遺作。
天皇の子として生まれながら、幼いうちに親元を離されて仏門に入り、「日本仏教」の形骸化と堕落を目の当たりにしながらも、真の仏教・人の生きざまを真摯に模索して行く一休の姿が胸に迫って来る。
一方で坂口尚の絵と画面構成の上手さにも唸らされるばかりで、つくづく惜しい人を喪ってしまったと読むたびに実感する。
同族・兄弟が敵味方となり、裏切り・寝返りの絶えない南北朝期は、非常に分かり辛くとっつきにくい時代背景なのだが、その辺りの説明も分かりやすくて良い。
また、もう一つの柱として観阿弥・世阿弥らのストーリーが絡んで来る構成も見事。
地味な作家・地味な作品ではあるのだが、間違いなく名作。是非どうぞ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2010年10月17日
- 読了日 : 2010年10月17日
- 本棚登録日 : 2010年10月17日
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