まだ温かい鍋を抱いておやすみ

著者 :
  • 祥伝社 (2020年5月14日発売)
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本棚登録 : 1999
感想 : 155
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人は日々、食べて生きていく…そんな当たり前のことを心の底から実感できる、6つの短編集。
恋人、夫婦、友人、親子…様々な人間関係、どんなに相手のことを想っていても、歯車が狂ってしまうことは避けられない。躓いた心を救ってくれるのが、何気なく口にして「おいしい」と思えた味だったりすること、誰でも覚えがあるのではないだろうか。
哀しみや苦しみと真摯に向き合い、昇華させてくれる彩瀬さんの作品がとても好きだが、今回は「食」をテーマに、がんじがらめの人間関係をゆっくり解きほぐしていく。その過程が丁寧に優しく描かれ、何度も泣きそうになった。
素晴らしかったのはやはり、フード描写!焼きたての枝豆パン、鶏肉とセリのさっぱり煮、ジャンクなのにたまらなくおいしそうなミックスピザ、鍋いっぱいの具沢山味噌汁…。そそられるメニューがたくさん出てくるが、決して物語の添え物ではなく、登場人物達の喜怒哀楽と密接に絡み、心を揺らす。
改めて、「おいしい」って最強だな、と思う。そして間違いなく、力をくれる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の作家
感想投稿日 : 2020年5月31日
読了日 : 2020年5月31日
本棚登録日 : 2020年5月17日

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