汝、星のごとく

著者 :
  • 講談社 (2022年8月4日発売)
4.48
  • (4266)
  • (2057)
  • (620)
  • (77)
  • (39)
本棚登録 : 32798
感想 : 2870
4

青埜櫂と井上暁海の距離と関係をどきどきしながら読み進めた。だからなのだろうか、17歳から32歳までの年月が、あっという間に流れた感じがした。そのくらい、揺れ動く2人の心境と背景を想像し、引き寄せられていく話であった。「汝、星のごとく」のタイトルの意味にも興味を寄せながら、読み進めた。

瀬戸内の島という限定された狭い人間関係の環境や、親の離婚やその人間関係に振り回されながら、多感な高校生時代の話から始まる。一番身近な大人である親に振り回される環境にも、自分の道を探そうともがく高校生の2人だからこそ、分かり合えること、惹かれ合うことは自然な流れであると感じた。その一方で、不安定な生活とそれによる心の不安定さからくるどうすることもできないやるせなさを感じた。それぞれの夢があり、一緒にいたいと願う思いもあり、親から離れられない状況もあり、複雑に絡まっていく糸のように、解きほごすのは難しいなと感じた。このような中で、高校卒業後、櫂は夢であった漫画作家としての東京での生活が決まり、順調に時が流れていく。櫂と暁海のすれ違いが生じるには、条件や状況が揃い過ぎていた。さらに親との問題も重なっていく暁海。暁海は自分の夢より親との生活を優先させていく。暁海の心の中で、親とは離れられない思いと櫂とは離れたくない思いが天秤にかけられる。バランスをとるこは難しい。大切なものやことのどちらかを選ぶときの理由は何なのだろう。好きな気持ちに素直になれれば楽なのだろうけれど。そうもいかないのは親との関係だからなのかな。実際の距離が離れてしまっても繋がっていたい、そんな純粋な2人の気持ちが真っ直ぐに伝わってきて心地よい。でも、こうしたことが実際に起こったら、とても耐えられそうにない日々だとも想像する。距離が遠くても心の中にはいる、それは心底では温かいものにはなると思うけれど、やるせなくもあるのではないだろうか。その後、2人のそれぞれの生活や仕事が順調に積み重なると同時に、自然と心の距離が遠くなっていく。互いに気になる存在ではありながらも、すれ違っていく。会えない時間と距離がもどかしいが、仕方ないとも思う。そこから連絡さえもしなくなり、長い年月を経て、ついに暁海が自ら行動し再会をする2人。対面した2人が交わす言葉にぐっときて涙が出た。離れていた時を感じさせず、あっという間に分かり合う2人、そこに元々の思い合う気持ちの強さを感じた。

ラストは悲しく切ないが、「汝、星のごとく」に込められた意味に胸が熱くなる。これから、またの機会に凪良ゆうさんの作品を読むことが楽しみになる作品となった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月15日
読了日 : 2023年7月15日
本棚登録日 : 2023年7月15日

みんなの感想をみる

コメント 2件

アールグレイさんのコメント
2023/08/13

おはようございますm(._.)m
アールグレイと申します!

幾度かいいねを頂いていたようですね(*^_^*)
ありがとう!失礼ながら本棚を拝見しました。私の好みの本棚で、これはフォローしようと思いました。
もうひとつ、レビューをよく書いていることにも感激です。私はレビューUP→読了と考えています。以前に読んだ本は、内容を忘れたけれど本棚に置きたい!そのような本は★だけです。
ヤンジュさんの本棚を参考にさせて頂きたいと思います!
どうぞよろしくお願いします!
(^O^)*:。~

ヤンジュさんのコメント
2023/08/13

アールグレイさん、おはようございます( ◠‿◠ )
フォローありがとうございます!

レビューを読ませていただき、その作品の魅力を想像することも楽しみにしています!

その作品を読みたいなという思いが膨らみ
読みたい作品が増えて
嬉しい悩みとなっています。゚(゚^ω^゚)゚。
よろしくお願いしますヽ(*´∀`*)ノ

ツイートする