2008年(発出2005年) 409ページ
以前Kindle Unlimitedで読んだものを文庫本で再読。
読み始めと読み終わりでは、竜崎伸也に対するイメージがガラリと変わっているでしょう。
46歳の冴えない中年、家庭をかえりみない仕事人間、仕事場では無愛想、陰険と思われていて、自らも自分は陰性なのだと自覚する男。
しかし、読み終わった後は、冷静だが心の底に熱いものを秘めた愛すべき竜崎伸也に変貌していました。
東大卒の警察のキャリア官僚を描いた作品です。
法と秩序を重んじ、原理原則に従って行動する男。
妻からは唐変木と言われ、同僚からは変人と言われている。しかし、不正は許さず正義感に溢れている。国家のためなら命を投げ出す覚悟もある。
竜崎が、警察の隠蔽と家庭の問題にどう立ち向かっていくのかが見どころです。乗り越えたところに見えたのは、竜崎の心境の変化でしょうか。
いい味を出しているのは、竜崎の奥さんの冴子ですね。同僚のことを無能な役人とこき下ろす一方で、竜崎は冴子に無能な父親と言われます。竜崎は「俺はその無能という言葉が一番嫌いなんだ」と言っていましたが(笑)
冴子はいいセリフを言っています。「あなたは、一番父親らしいことをやったのよ。道を踏み外しちゃいけないって、子どもたちに教えた。だから、言ったのよ。無能な父親にしてはよくやったって」
最後は異動となってしまった竜崎ですが、すごく読後感の良い小説でした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説 国内 男性作家
- 感想投稿日 : 2024年2月15日
- 読了日 : 2024年2月15日
- 本棚登録日 : 2024年2月15日
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