クリングゾールをさがして

  • 河出書房新社 (2015年5月26日発売)
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感想 : 7
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ナチスが支配するドイツで、ヒトラーの信任厚い1人の科学者が科学分野の予算を握っており、実験や計画にはすべて彼の承諾が必要だった。科学者たちの間で密かに恐れられていた彼の名は通称「クリングゾール」。オペラ「パルシファル」に出てくる悪の魔術師の名前だ。このクリングゾールとは誰のことなのか。その謎をめぐって2人の人物の運命が交錯する。
アメリカの数学者であるフランシス・ベーコンとドイツ人数学者のグスタフ・リンクス。2人は協力して次々とドイツの科学者たちに話を聞き、誰が裏切り者であったのか推測する。
正直ミステリー的な部分よりも、この時代の物理や数学の世界の大転換の話がすごく面白かった。ハイゼンベルグの不確定性原理が、ドイツ人物理学者の一部にこんなに拒絶されていたとは知らなかった。人間がどんなに進歩しても絶対に分からない謎が科学の世界にはあるということに、誇り高い人々ほど納得できなかったのだろう。作品の中でプランクが言う「科学は若干宗教のようなもの」という言葉がとても印象深い。彼らの理論を理解できる頭はないけれど、彼ら天才も自分の信念、理論を正しいと信じたい1人の人間であることがよく分かった。ちなみに、ベーコンやリンクスの愛の話はピンとこなかった。再読すれば分かるのかもな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー(海外)
感想投稿日 : 2015年10月31日
読了日 : 2015年10月31日
本棚登録日 : 2015年6月12日

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