もう二度と食べることのない果実の味を

著者 :
  • 小学館 (2019年4月16日発売)
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本棚登録 : 224
感想 : 26
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雛倉さりえさんの最新作。
ジェリーフィッシュは途中で挫折してしまったけど、今度こそ…!と意気込んで読んだら、全然そんな必要もなくみるみる世界にどっぷり入り込んでしまい、あっという間に読了。

性の目覚め。自分の中に眠っていた欲望に気づき、それらを爆発させる術を覚えてしまうこと。自分の以外の体温の心地よさを知ってしまうこと。
優越感や、多幸感や、背徳感や、罪悪感や、そういうものをずっと抱えながらも貪るように性行為に耽っていたあの頃。神社の裏で、自分たちだけ大人になったつもりで、あれほど神聖で特別で禁忌だったはずの行為は、本物の大人になった今は一体何に変わってしまったのだろう?
これは物語だから、正直どこかで先生や親にバレたりしてほしいな〜なんて意地悪く期待するところもあったけれど、まぁ冴と土屋くんの世界が守られたままで良かった。破滅ってほどじゃないよ。

大人になってからの方が人生は長い。
一瞬重なりすれ違っただけなのだとしても、きっといつまでもその交差した瞬間の、まるごとの全身で体感した熱は、傷跡のように消えることはないのだと思う。私も作者とともにそう確信している。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年6月11日
読了日 : 2019年6月4日
本棚登録日 : 2019年6月4日

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