昨夜のカレー、明日のパン

著者 :
  • 河出書房新社 (2013年4月19日発売)
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本棚登録 : 6117
感想 : 922
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図書館で予約してから一年あまり、ようやく読めました。
夫を亡くした妻・徹子と、息子を亡くした義父との共同生活が短編形式で綴られています。
もっと悲壮感漂うストーリーかと思っていたのですが、そこにあったのは予想外にも二人の淡々とした静かな日常でした。同居している義父の呼び方がが、"ギフ"という記号になっているのも、その暮らしぶりをよく窺わせています。
テツコの「もうここにいないってことで、もう、そういうことで、いいよね?」という絞り出すような一言には胸が締め付けられました。
けれど、二人と関わり合っていく人物が皆なんと人間味に溢れていること。そんな人たちに支えられながら、きっとまた少しずつ前に進んでいけるのではないでしょうか。

収録されている中では特に「夕子」が良かったです。
情景描写が秀逸で感動しました。
金色に輝く庭にどっしりと根をはる銀杏の木には、これまで自分が生きてきた軌跡を肯定してくれるような心強ささえ感じます。

死を眼前に突き付けられたとき、私は何を思うのかな。
そんなことを改めて考えさせてくれる、少しシュールでほっこりとやさしいお話でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(国内)
感想投稿日 : 2014年10月29日
読了日 : 2014年10月29日
本棚登録日 : 2014年10月29日

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