瓶詰地獄 (立東舎 乙女の本棚)

  • 立東舎 (2017年12月13日発売)
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本棚登録 : 467
感想 : 53
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とある島に流れ着いたた三本のビール瓶には、それぞれに手紙が入れられていた。
その手紙には、離れ島に漂流してしまった兄妹による、助けを待ちながら暮らす島での何年間にもわたる生活の様子と、懊悩が書かれていた——

〈ああ。何という恐ろしい責め苦でしょう。この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。〉

鼻血がでそうなほど耽美な話だった。十一歳の私と、七歳になったばかりの妹のアヤ子。
二人きりで漂流した先は、それでも食糧が豊かにあり、清らかな風と美しい花に彩られ、小鳥のさえずりを聴きながらのんびりと過ごせる島だった。
まるで楽園にいるかのような暮らしをしていたはずだったが、アヤ子が成長していくにしたがい、やがて二人の様子がおかしくなってくる。誰も止められない、美しくも悩ましい狂わんばかりの変容。
禁忌だとわかりながらどうすることもできない感情や衝動と、それを抑えんとする祈りの神々しさ、それらのすべてが残酷だった。
瓶に封じ込めて海に投げることしかできない兄の想い。第一の瓶、第二の瓶、第三の瓶のあんばいが見事だった。
ホノジロトヲジさんのイラストが繊細で儚げで、とにかくぴったり。夢野久作は読みたくてたまらないわりに食指が伸びないので、少女の本棚シリーズでこれからもたくさん刊行してくれることに期待!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 名著
感想投稿日 : 2023年9月13日
読了日 : 2023年9月12日
本棚登録日 : 2023年9月12日

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