プルメリアのころ。 (Holly NOVELS)

著者 :
  • スコラマガジン(蒼竜社) (2016年2月26日発売)
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感想 : 6
4

1945シリーズ5作目で最終巻となる本作
タイトルに初めて「 。」が付されているのはこの作品が最終巻と表明しているのかと思わされる

本作は1945シリーズで最も最弱で現代の私達の価値観に近い2人、畳屋の息子でいて偵察員の新垣一(カズイ)と航空基地ラバウルにてお飾り少尉と揶揄される貴族出身の鷹居千歳が主人公だ

千歳は見るからに軟弱で航空隊員にあるまじき高所恐怖症で泣き虫
カズイもできれば楽をして出世し早々と内地へ帰還したいと目論んでいる
2人の姿は何とも対照的なんだけど、心の芯にある部分は合い通じる部分が感じられるのが面白い
毎回の飛行で嘔吐を繰り返し泣き喚きつつも決して逃げ出す事なく飛び立ち任務を遂行する千歳
利己的な我欲を包み隠すことすら放棄していたというのに、千歳の心の内を垣間見てしまってからは、千歳の側にずっと添い続けると決心するカズイ
2人の凸凹さがとても可笑しくも愛しい

「プルメリアのころ。」は千歳とカズイの成長物語でもあると思う
ともすれば利己的なカズイが千歳との出会いによって思いやり責任を負う事を厭わない男になっていく
千歳はカズイとの契りによって心身ともに強い絆を得て1人の男として自立していく
伯爵家での千歳と父との対話は静かに強い自信を漲らせた千歳が父を圧倒する
過去にサヨナラを告げた千歳の姿はとても清々しい

負傷し内地に帰還した2人が仲睦まじく暮らす様子には本当に幸せな気持ちにさせられる

誰でもない肩書きなどもないただひとりの千歳を愛するカズイの大きな温かい胸の中で抱かれ
千歳には毎日幸せな吐息を吐いて欲しい

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL
感想投稿日 : 2021年1月30日
読了日 : 2020年12月31日
本棚登録日 : 2021年1月24日

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