ジッドのエッセイやバタイユの論考で再評価されたという触れ込みに心惹かれてゴシック小説なるものを初めて買ってみた。
両親、兄弟間の確執から殺人へとつながる事件の顛末を編者の客観的視点から語るパートと罪人自身の主観から語るパートに分かれる。
宗教的偏見に捉われない父・兄に対して教義を徹底する母・弟。
編者パートでは陽キャ兄の生活が陰キャ弟によるストーキングを境に破壊されていく様が、罪人パートに入ると弟がある友人との出会いをきっかけにいかにして悪魔的な所業を重ねるに至ったのかが描かれる。
弟の出会った友人の正体が本書の解釈の難しさだと思うのだが、私は弟の精神が生み出した化け物が具現化されたものと考えたい。
途中何度も友人に反抗し逃げ出すが、いつも居場所を見つけられ最後には自分の都合に合わせて教義をねじ曲げ行動に移してしまう。
心のなかでずっと葛藤していたものの、最終的には自分自身で作り出した悪魔に支配されてしまったのではないか。
宗教や精神医学に明るい人が読めばまた異なった視点があるかもしれない。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年4月23日
- 読了日 : 2024年4月23日
- 本棚登録日 : 2024年2月4日
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