前作では行き当たりばったりで囚人を救出したミス・ビアンカたち。
今回は、冷酷な大公妃にこき使われる少女・ペイシェンスの救出をすることになる。
8歳で身寄りもなく、大人でさえも嫌がる大公妃のお世話を、ほぼたった一人でこなさなければならない彼女は、もはや幸せだったころの思いでさえも薄れつつある。
そもそもダイヤの館のような建物を作れるくらい金持ちのはずの大公妃が、コックも雇わず(三度の食事は執事が作る)、貧相な馬と壊れそうな馬車とならず者の厩番しか置いていないという、お金の使い道のアンバランスよ。
そして、12人の小間使いロボットに15分ごとに時間を告げさせる以外、一日中何やってるんでしょう、大公妃は。
というか、妃というからには夫がいるの?
それとも未亡人なの?
とまあ、こんな得体の知れない地獄のようなところから少女一人を救出するために、今回は事前にいろいろリサーチもし、作戦も万全、のはずだった。
救出するのは「囚人友の会」の婦人部隊24匹。
ところが、小間使いロボットに驚いて、ミス・ビアンカを残したまま逃げ帰った挙句、自分たちの無様な有様を隠蔽し、事態はそのまま放置される。
それでは納得ができないのが、新たに「囚人友の会」 の事務局長になったバーナードだ。
ミス・ビアンカとくらやみ城で囚人を救出したこともすっかり忘れられた、影の薄い彼は、しかしミス・ビアンカが戻ってこないことを不審に思い、救出に行く。
2匹はお互いに惹かれ合ってはいるのだけど、身分が違うこともあって、決して互いの心の内を明かさないのね。
その奥ゆかしさが、とても良い。
ねずみが、たとえ少女とはいえ人間を救出して、その後どうするつもりなのか?
これについてもちゃんとミス・ビアンカは考えてあって、思った以上の結末をもたらす。
だけど、ペイシェンスとの別れはちょっと切ない。
これからの彼女のために、自分のことは忘れたほうがいいのだととわきまえるミス・ビアンカ。
児童文学だけど、ミス・ビアンカもバーナードもちゃんとした大人だ。
だから安心して読めるのだ。
- 感想投稿日 : 2023年2月19日
- 読了日 : 2023年2月19日
- 本棚登録日 : 2023年2月19日
みんなの感想をみる