桜雨 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (1998年10月20日発売)
3.42
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本棚登録 : 197
感想 : 20
4

現代(よりちょっと昔)パートと戦時中のパートが交互に語られる。
現代は三人称で、戦時中は早夜の視点で。
それが交差した時が物語のクライマックスになる、と思ったのだけど。

現代パートの主人公・額田彩子は出版社で画集を編集している。私生活では自分勝手な同棲相手と別れた直後。
戦時中のパートは美術専門学校を中退した早夜が、奔放な生活の果てに愛した画家・西游(さいゆう)と、美人で金持ちの新進画家・美紗江との三角関係に苦しむ話。

この西游というのが、生活力がなくて女好きのくせに、自分の芸術に対しては一切の妥協をしないという自己チュー男。
しかし、だからこそ、離れられない二人の女。

自己チューというのなら、田舎に帰りたくない、東京で暮らしたいという一心で学校をやめ、絵のモデルをしながら遊び暮らす早夜も負けていない。
苦しい生活の中からお金を送ってくれる親や、間借りさせてくれる子だくさんの叔父の気持ちを踏みにじり、自分に心を寄せてくれている雄吉の思いを知りながら、都合のいい時にしか寄り付かない早夜。

彩子の近所に住んでいると思われる二人の老女は、早夜と美紗江であろうことはすぐにわかる。
しかし、二人の間に厳然として存在していた西游はどうなったのか?

感情移入できる人物のいない恋愛小説は、なかなか読み続けるのに骨が折れる。
今一つ乗り切れないまま、終盤、空襲で焼け出された西游と美紗江が早夜の元で一緒に暮らし始めてから、物語の緊張の度合いが高まる。
絶対に破局するはずだ、こんな関係。
しかし、現在西游は何をしているのか?
なぜ早夜と美紗江は一緒に暮らしているのか?

最後の50ページは一気読み。
そして衝撃の顛末。
ひゃ~、途中でやめなくてよかったよ~。
だから読書はやめられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年3月9日
読了日 : 2019年3月9日
本棚登録日 : 2019年3月9日

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