金原ひとみの小説を読むときは、深呼吸をして肺に新鮮な空気をたくさん溜め込まないとだめだ。それでも苦しくてしょうがない。
傷つきやすい心をかばうかのように、過剰なまでに繰り出される攻撃的な言葉の羅列。
正直この手の小説は得意ではない。
でも、こんなに傷ついている心を見せつけられたら、目をそらすわけにはいかないでしょう。
誰にも必要とされない存在になる前に、誰のことをも必要としない。
誰からも心を開いてもらえないから、誰にも心を開かない。
それですんでいた。今までは。
満たされはしなくても、傷つきもしなかった。
でも村野に出会ってから、見ていたい、触れていたい思いが、見て欲しい、触れて欲しいへ。
愛してほしい。気にかけてほしい。気づいてほしい。1ミリでいいから。
それが駄目なら、殺してほしい。
けれどすべての思いは村野を通過していくだけ。
村野は感情の起伏がない。好きでもなければ嫌いでもない。ただ…。
「好きです」「はぁ」
「ちょっと飲みませんか?」「いいですよ」
「泊まりませんか?」「いいですけど」
「私のこと嫌いでしょ?」「嫌いじゃ、ないですよ。別に、好きじゃないですけど」
「結婚しませんか?」「いいですよ」
これでは、何の実感も持てないではないか。
アヤが村野に執着しているとき、同居人のハヤトは赤ん坊と二人の世界の中でどんどん壊れていった。
二人が愛を得ようともがいている姿は現実社会では犯罪で、だけどそれを止める手立てが私にはないので、すごく息苦しいのだけれども黙ってこの本を読み続けたのだ。
好き嫌いの別れる作品ではあるが、誰の心にも何らかの爪痕を残すすごい作品であることは確かだと思う。
お勧めはしにくいけれど。
- 感想投稿日 : 2014年8月15日
- 読了日 : 2014年8月15日
- 本棚登録日 : 2014年8月15日
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