観覧車 (祥伝社文庫 し 10-7)

著者 :
  • 祥伝社 (2005年6月1日発売)
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目次
・観覧車
・約束のかけら
・送り火の告発
・そこにいた理由
・砂の夢
・遠い陸地
・終章、そして序章

柴田よしきの、プロ作家としての初めての作品ということもあって、ちょっとまだこなれてない部分もあるけれど、面白く読んだ。
結婚して一年で失踪した夫が遺した探偵事務所を、彼の帰る場所を守るために引き継ぐ唯が主人公。
いくつかの事件は、唯が夫を探すための手掛かりにもなる。

ちょっとネタバレになるので詳しくは書きませんが、単身赴任のお父さんのために娘が作った手作りチョコを送るという妻に、「帰って食べるから送らなくていい」という夫。
これはひどい。
夫の本心は、もう食べることができないから送らなくていいということだったんだろうけれど、却って食べると言われた家族は、彼の帰りをずっと待っていたはずだ。
そこに思い至れないほど追いつめられていた、ということも言えるけど。

それに対して唯は、”男は、嘘をつくのだ。決してついてはならない、嘘を”と憤るのだけど、解説の新井素子が、恋愛経験値が低いけど…といいつつ別の見解を述べる。
”男って、決してついてはならない嘘をつく生き物なのと同時に、”約束”と”希望的観測”の区別のつかない、単なる莫迦なんじゃないのか?”

ああ、なるほど、確かにね。
私も何度か起ったわ。
ぬか喜びさせるな!って。

だけど唯の夫は10年も失踪しているのだよ。
目撃されたこともあるから、生きていると思われる。
なら、なんらかのアクションを妻にしてしかるべきなんじゃないの?
死亡届けを出すのもご勝手にってのはもう、妻に対して無責任以外の何物でもない。

もちろん夫には夫の事情もあるだろう。
だけど、あまりにも自分の事情しか考えてないと思うのだ。
唯の夫も、約束と希望的観測の中で揺れたかもしれないけれど、ひとりの人間の人生を束縛するには、10年はあまりに重いと思うんだよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月3日
読了日 : 2021年9月3日
本棚登録日 : 2021年9月3日

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