ちよう、はたり

著者 :
  • 筑摩書房 (2003年3月1日発売)
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感想 : 7
4

糸を染め、機を織る。
その日々の中にある、宗教だったり、日本人の心に流れる美の意識だったり、その歴史だったりを、繊細に掬いだして文字に落とす。
日々は生活であり、学習でもある。
禁欲的な中に、魂の震えが感じられる。

こういうふうに年を重ねたいんだ。
でも私には美的センスもなければ、細かな作業のできる指先もない。
…というような言い訳を許さない、厳しさ。

それでも最近、本を読みながら無性に感じる手先の疼き。
インプットだけではなく、何かを作り出したい、アウトプットしたい思い。

歳をとることは生活をシンプルにすることだ。
そう思ってきたけれど、いまだくすぶり続ける何かを残したい気持ち。

著者も、一人自分と向き合いながら日々を過ごそうと山奥に小屋を建てたあとに、海外旅行へ行く機会が増えたという。
歳をとることは縮小していくことだけではないのかもしれない。
歳をとったからこそ広がる世界があるのかもしれない。

今から染色家として人間国宝になることはもちろんできないが、自分の老後をどう過ごすか、何度も自問しながら読みました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年1月2日
読了日 : 2020年1月2日
本棚登録日 : 2020年1月2日

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