3DKのエレベータもないマンションでひとり暮らしをしていた姑が、急逝した。
主人公は嫁として、遺品整理に通うのだが、あらゆるものが過剰にある家で途方に暮れるばかりだった。
うん、わかる。
ある年齢以上の女性によくある、捨てられない症候群。
いつか使うことがあるかもしれないから。
対して、主人公の実母は、がんが判明してから亡くなるまでの1年半で断捨離を敢行し、誰にも迷惑をかけなかった。
安物買いの銭失いの姑。
いいものを大切に長く使う実母。
対照的なふたりの母。
最初は姑に、実母を見習えと心の中で毒づいていた主人公の望登子だったが、あけっぴろげで人付き合いの多い姑と、誰との間にも一線を画し本音を見せなかった母の生き様をみるにつけ、彼女の心は揺れる。
仕事が忙しいという理由で遺品整理に関わらなかった夫が、あれもこれも思い出の品だから捨てないと言っていたのに、実際に自分の家に持ち帰ってみて、ようやく捨てることができるようになるくだりとか、実際に整理に出向いて初めて重労働であることを理解する辺りが、リアルで面白かった。
特に息子は母親に思い入れが深いらしいからね。
現実的にばっさりと切り捨てることができんのでしょう。
マンションを引き払うころには、望登子にも姑がどうやって近所の人たちと暮らしてきたかがわかり、自分も隣家の子どもとかかわりを持つようになる。
どんなに立派に生きていても、人はひとりだけで生きていくことはできないのだから、迷惑をかけたりかけられたりしながら人と関わることも必要なのだと思う。
それもまた豊かな生き方と言えるだろう。
- 感想投稿日 : 2021年9月15日
- 読了日 : 2021年9月15日
- 本棚登録日 : 2021年9月15日
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