リボンというなんとも愛らしいタイトルの本。表紙の鳥の絵が可愛く、読んでいくと表紙の鳥がリボンという名前のオカメインコであることがすぐにわかった。
少女・ひばりと祖母・すみれは、「ひばりさん」と「すみれちゃん」と呼び合う仲良し。ふたりは、大切に一羽のオカメインコを孵化させ(しかも頭の中で)、リボンと名付ける。かわいがって育てていたある日、リボンは空に飛び去ってしまう。リボンが居なくなって虚しさが増すふたり。しかし、一方でリボンはいろいろなところで、たくさんの人と出会い(飼われ)、そこで出会った人たちの内に秘めた魂を大切な人に伝え、人と人との絆を深める存在となっていた。
登場するそれぞれの人がそれぞれに考え方や生き方がある。そして、彼らの生き方には魂や心がある。本作で「魂は心に守られ、心は更に体に守られている。」の名言がある。
リボンは、それぞれの人の人生という歴史の一場面に名前を変えて登場し、人を素直な気持ちさせ、想いの方向に導いているように思える。それが人の魂であり心として、本作では表現されている気がする。
私も小学生の頃に黄色のセキセイインコを飼っていた。まだ、毛も生えていない小さい時に知り合いからいただいた。2時間おき餌をヘラであげるのだが、首が異常に伸びて、その姿は到底、可愛い鳥という姿ではない。小さい頃から世話をしていたので、私には手乗りインコ以上の関係で、家族だった。私の顔を見るとすぐ肩に乗ろうと、飛んでくる。庭に出ても逃げることもなかったので、肩に乗っているという意識もなく、その日も肩に乗せたまま庭に出たところ、ボールがたまたま飛んできて、そのボールにびっくりして、飛び去ってしまった。一度、羽ばたいた鳥は、私が名前を呼ぼうとも、戻っておいでと叫ぼうとも振り向きもせず、大空に嬉しそうに羽ばたいたて去ってしまった。しばらくは、私もすみれちゃんやひばりさんのように落ち込み、猫に食べられはしないか、誰かに捕まえられて殺されはしないかと、ネガティブ思考で悲しみに打ちひしがれていた。そんな時、母が、「家の中でパタパタと飛び回るのではなく、大空に羽ばたいていくことができてよかったのではない?思いっきり飛べるんだよ。それに、疲れたらきっと親切な人を見つけて、その人の肩にとまり行くから心配しなくても大丈夫よ。幸せを祈ろうね。」と、言った。
その1年後に今度は、庭にいた母の肩に水色のセキセイインコがとまりにきた。何た不思議なことがあるんだろうと、幼い私は、あの時の母の言葉を思い出して、逃げた黄色のインコも無事に生きているんだと思った。
そんな幼い時の思い出が本作と被り、別れが全ての関係を切ってしまうわけではなく、別れがあるから、また別のところで出会いがある。
そして、共有した想い出や言葉は自分の心の中に残る。またその想いや言葉を一緒に感じたり、聞いている人がいればその人の想い出が、私の想い出を補完する形で残っていく。
別れの定義が変わるような物語だった。
- 感想投稿日 : 2020年6月29日
- 読了日 : 2020年6月29日
- 本棚登録日 : 2020年6月29日
みんなの感想をみる