生命とは何か: 物理的にみた生細胞 (岩波文庫 青 946-1)

  • 岩波書店 (2008年5月16日発売)
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本棚登録 : 1840
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まずはエピローグを読んでみましょう。すると、シュレーディンガーが「「私」とは何か」というある種の心身問題に興味を持っていることがわかります。その上で全体を眺めるのが良いと思います。
さて、シュレーディンガーといえば、量子力学でおなじみの名前ですが、本書はーー一般向けの講演形式で展開されていますがーー当時は生命科学におけるバイブルとして多くの人に読まれたそうです。そして、これで勉強した人々がまた、新しい成果を次々と生み出した礎となりました。
量子力学というバックグラウンドから生命を論じるところには難しさがあります。そもそも、こういった歴史的な科学の大著を読むときは今の私達なら高校生でも知っていることがまだ分かっていないということもあるのですから、それを織り込んだ上で読まないといけないので、難しいのです。したがって、はじめに述べたように著者の「世界に対する見方」てあるところのエピローグをしっかり読むのが面白いと思います。科学者は自然法則を明らかにするのが仕事ですが、それでは、人間とは機械仕掛けなのか?という問を必然的に生み出します。その問題は現代においてもまだまだ研究されているとしても、このエピローグではそれに対して弁証法的なアプローチを考えている様子が伺え、個人的にはその人柄や、量子力学というバックグラウンドなども垣間見え、好感が持てました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物系読み物
感想投稿日 : 2021年10月8日
読了日 : 2021年10月8日
本棚登録日 : 2021年10月8日

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