宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃

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  • KADOKAWA (2019年4月25日発売)
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「宇宙」とは天文学の宇宙ではなく、数学における「宇宙」のこと、つまり、足し算とかかけ算とか、自然数とか複素数とかそういった数学をするのに必要な道具一揃いのことをいいます。もしかしたら違う平行世界にはわたしたちの想像しないような計算方法で(違う宇宙で)計算しているかも知れません。京都大学の望月新一教授はそのような異なる宇宙の間で数式をやりとりする方法を調べたところ、もちろん計算結果がずれてくるのですが、そのずれを不等式で評価する方法を見いだしました。それが宇宙際タイヒミュラー(IUT)理論です。国際が国と国との間を表すように宇宙際とは宇宙と宇宙の間、という意味です。
 これを調べることによって長いこと未解決問題だったABC予想(ヨビノリさんの動画を貼りますhttps://www.youtube.com/watch?v=PIUCfN08p8M)という問題が解けてしまいました(証明については現在も議論中?一応論文掲載に至ったが、新しすぎて世界でも理解できる人が少なくて合ってるのかどうかわからない)。
 この本は一般向けの科学書であり、これを読んでも理論の詳細は理解できないのですが、本書は望月教授の親友であり、もっとも近くでこの理論が出来る過程を見てきた加藤氏が望月教授の人となりを紹介しているという側面もあり、数学の研究ってこういう風にやるのか~ということを純粋に楽しむことも出来ます。
 数学好きの中には厳密な証明こそが大事でアナロジーやお気持ちなどは不要という人もいると思いますが、この本を読めばアナロジーで発想を豊かにすることも大事なのだ、とわたし自身は元気づけられました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 数学よみもの
感想投稿日 : 2023年1月31日
読了日 : 2020年11月14日
本棚登録日 : 2020年11月21日

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