生きている意味は?とはよく聞かれる問答です。その多くは生の価値について論じているのですが、では、価値とは何か?非常に難しい問題であると言えます。ラズ氏は法倫理学者ですが、この本を通じて「価値の普遍性」というテーマについて論証します。論証は様々なあり得る反論を並べていき、それに対して反論可能なものと、エクスキューズをつけなくてはいけないものを順に論じていき、「価値の普遍性」の射程を絞り込んでいく、という内容です。価値が普遍的であるということを受け入れるならば、各人が何に価値を感じるかに多様性があることは、どのように説明されるのでしょうか?
これという結論の得られない問題で、歯切れが悪いと思う人もいるかもしれませんし、難解と思うかもしれません(実際難解なのですべて理解できていませんが)。ですが、そのような議論を経ることで、自分自身の考え方が少し変化する、そんな風に感じられるかもしれません。
わたし自身も、本書とは論理が違うかもしれませんが「生きることそのものに価値などない」という意見です。これは一見否定的ですが、価値などないならば、むしろ何にでもなれる、どのように自分を価値づけるも自由、という概念に至る可能性を秘めていると思うからです。
トランス女性に対する謂われない非難がありますが、もしあなたが生きる価値を見失ったとしたら、この本を一周してみてもいいかもしれません。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
哲学
- 感想投稿日 : 2023年3月11日
- 読了日 : 2023年3月11日
- 本棚登録日 : 2023年3月11日
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