九十歳のラブレター

著者 :
  • 新潮社 (2023年12月25日発売)
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本棚登録 : 65
感想 : 6
5

あっという間に読めてしまう
筆者の奥様に語りかけるように、あなたと呼びながら昔を回顧していく文体に惹き込まれる

とても理想的なカップルだと感じた。もちろん思い出は美化されていくものだし、息子さんのあとがきにもあったように思い出に酔われたように書かれてるところもあると思う。それでも、奥様がまったく大袈裟ねと笑い飛ばしてる姿が想像されるくらいに詳細に2人の関係性が描かれていて素敵だった。
この作品が、亡くなられる直前90歳を超えた時に書かれていることも感動的だ。認知症が進んでいることを認められているのに、詳細に、当時の景色、季節感、会話、表情を書き記されていて、奥様と過ごされた時間の濃さと愛情を感じる。

何より奥様の人柄にすごく惹かれる。20代女の私にとって理想的な女性像に映った。好奇心が旺盛で、それを突き詰める忍耐力、そして何よりも環境を言い訳にしない行動力に感服する。アメリカでもハワイでも80歳になっても、あら面白そう学んでみたいわと言ってサッサと国を跨ぎ、団体や教室に申し込んで、自分の世界を押し広げていく。臆するより興味を優先されて、なんと深みのある女性だと思った。なかなかに身勝手な筆者だと思ったが、その人を旦那さんに選んだのは自分の選択という奥様の強い意志、そして我儘に付き合ってくれた奥様への感謝を忘れない筆者も魅力的だ。 

隠居して、自室をそれぞれ持たれていたお二人。それでも毎日リビングで3時間デートを重ねていたという言い回しがとてもロマンチックだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月24日
読了日 : 2024年3月24日
本棚登録日 : 2024年3月24日

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