日暮らし(中) (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2008年11月14日発売)
3.99
  • (207)
  • (303)
  • (205)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 2169
感想 : 106
5

「宮部みゆき」の長編時代小説『日暮らし』を読みました。

『震える岩 霊験お初捕物控』、『天狗風 霊験お初捕物控【二】』、『あやし』、『ぼんくら』に続き、「宮部みゆき」作品です。

-----story-------------
〈上〉
一日、一日積み上げるように、みんなそうやって日暮らしだ。
時代小説(ミステリー)の最高傑作『ぼんくら』に続くシリーズ最新作

浅草の似顔絵扇子絵師が殺された。
しかも素人とは思えない鮮やかな手口で。
「探索事は「井筒様」のお役目でしょう」――。
岡っ引きの「政五郎」の手下、「おでこ」の悩み、植木職人「佐吉夫婦」の心、煮売屋の「お徳」の商売敵。
本所深川のぼんくら同心「平四郎」と超美形の甥っ子「弓之助」が動き出す。
著者渾身の時代ミステリー。

〈中〉
「弓之助」と「おでこ」、ころころと走る、走る!
本所深川の同心と超美形の甥っ子が挑む、探索事は――

「佐吉」が人を殺めた疑いを受け、自身番に身柄を囚われた。
しかも殺した相手が実の母、あの「葵」だという。
今頃になって、誰が「佐吉」に、18年前の事件の真相を教えたりしたのだろう?
真実を探し江戸を走り回る「平四郎」。
「叔父上、わたしは、本当のことがわからないままになってしまうことが案じられるのです」。

〈下〉
岸が違えば、眺めも変わる。本当に真実(ほんとう)のこと
築地の大店「湊屋」の抱える“お家の事情”。クライマックスへ

「ねえ叔父上、ここはひとつ、白紙(まっさら)に戻してみてはいかがでしょう」。
元鉄瓶長屋差配人の「久兵衛」からもたらされた築地の大店「湊屋」が長い間抱えてきた「ある事情」。
「葵」を殺した本当の下手人は誰なのか。
過去の嘘や隠し事のめくらましの中で、「弓之助」の推理が冴える。
進化する“宮部ワールド”衝撃の結末へ。
-----------------------

ぼんくら同心「井筒平四朗」シリーズの第2作、、、

前作『ぼんくら』から1年後の物語… 前作に引き続き、時代ミステリを堪能できました。

 ■おまんま
 ■嫌いの虫
 ■子盗り鬼
 ■なけなし三昧
 ■日暮らし
 ■鬼は外、福は内
 ■解説 末國善巳

冒頭に短篇小説が数篇並び、その後に長篇が置かれる… 前作を踏襲した構成でしたね、、、

一見すると無関係に思える冒頭の一話完結の短篇の中に、長篇部分の伏線が張り巡らされており、後半の『日暮らし』でパズルのピースが嵌るべきところに嵌ってスッキリする展開… このスタイル、好きですね。


『おまんま』は、気鬱で寝込んでしまった「三太郎」が、扇子に似顔絵を描く人気絵師が殺された事件を捜査する「平四郎」を助ける物語、、、

「三太郎」は、自分がおまんまを食わせてもらうだけの働きをしているかに悩み、伏せってしまっていた… 働くことの意味を問い掛ける作品でした。


『嫌いの虫』は、鉄瓶長屋の差配人を辞めた後に植木職人に復帰した「佐吉」と、「総右衛門」の妾腹の娘を育てていた王子の水茶屋の娘「お恵夫婦」の物語、、、

まだ新婚の「佐吉」と「お恵」だが、「佐吉」の不可解な行動が夫婦の間に波乱を巻き起こすことになる作品。


『子盗り鬼』は、前作でのキーパーソンながら名前だけの存在(幽霊のような存在)だった「葵」が初めて姿をみせる物語、、、

「葵」は「総右衛門」の姪で、「佐吉」の母… 「葵母子」は成功した「総右衛門」の家で育ったが、「総右衛門」が「葵」と「佐吉」ばかりをかわいがるので、正室の「おふじ」との間に確執があったという。

「葵」は、その渦中に失踪したため、何者かに殺されたとも、「佐吉」を捨てて男と出奔したとも噂されていた… 前作では掴みどころのなかった「葵」だが、本作品では、ストーカーにつきまとわれ命の危険に晒されていた「お六母子」を救う人情家の一面をみせる、、、

大仕掛けを用意してストーカーを罠に落とす展開はスッキリしましたね。


『なけなし三昧』は、鉄瓶長屋のまとめ役だった「お徳」が主人公の物語、、、

幸兵衛長屋に越して、再び煮売り屋を開いた「お徳」… だが、同じ長屋で婀娜(あだ)な美女「おくめ」が総菜屋を開店。

豪華なおかずを破格な値段で売る「おくめ」の店に押され、「お徳」の店には閑古鳥が鳴いていた… 「おくめ」の放漫経営を不審に思った「平四郎」が調査を始めると、異常な商売の裏事情が明らかになる。


そして、メインとなる『日暮らし』は、芋洗坂近くにある「総右衛門」の別宅で暮らしていた「葵」が殺され下手人として「佐吉」が捕まってしまう物語、、、

「佐吉」の無実を信じる「平四郎」は、「弓之助」、「三太郎」らと捜査を開始… 再び「湊屋」の闇と向き合うことになる。

過去の嘘と隠し事の目くらましに、迷って悩む「平四郎」、夜ごとの悪夢でおねしょをしても、必死に謎と向き合う「弓之助」… 「ねえ叔父上、ここはひとつ、白紙(まっさら)に戻してみてはいかがでしょう」、、、

「平四郎」は、散り散りになった元鉄瓶長屋の住人はもとより、「湊屋総右衛門」と腹心の「伊兵衛」、「総右衛門」の息子「宗一郎」らを訪ね事情を訊く… 「湊屋」の人々の数奇な運命と、人間の業の深さを前に、懊悩しつつも、謎に迫り続ける「平四郎」と「弓之助」。

二人はたどり着けるのか… いやぁ、意外な女性が犯人でした、、、

ミステリを堪能できましたね… 「弓之助」の成長が著しく、推理の鋭さが増していて、頼もしかったですね。


最終話の『鬼は外、福は内』は、エピローグ、、、

「おとよ」(「弓之介」の従姉)の結婚式に「平四郎」の憧れの人、死んだはずの三代目「白蓮斎貞洲」が出現… 「平四郎」が大喜びするシーンで締めくくりです。


でも、全編を通じて随所で良い役を演じているのは「お徳」ですねぇ… 「お徳」の総菜を食べてみたいなぁ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>時代/歴史
感想投稿日 : 2023年3月6日
読了日 : 2019年4月12日
本棚登録日 : 2022年3月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする