王妃の館 上 (集英社文庫)

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  • 集英社 (2004年6月18日発売)
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「浅田次郎」の長篇ユーモア小説『王妃の館〈上〉〈下〉』を読みました。

『終わらざる夏』、『残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉』に続き、「浅田次郎」作品です。

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〈上〉
思いっきり笑えて泣ける、人情巨編!
150万円の贅沢三昧ツアーと、19万8千円の格安ツアー。
対照的な二つのツアー客を、パリの超高級ホテルに同宿させる!?
倒産寸前の旅行会社が企てた、“料金二重取りツアー"のゆくえは…。

パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館」。
今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。
しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて…。
ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。

〈下〉
涙と笑いの人生ツアー、ついに決着へ!
愛人と別れたうえリストラされたOL。
人気作家とその担当編集者。
心中を目論む老夫婦。
カード詐欺師の夫婦…。
「ルイ十四世」の秘話を織り込んで、親子の愛が、夫婦の愛がホロリとさせる珍道中の物語。

ひと癖もふた癖もある「光」と「影」のツアーメンバーたちは、ドタバタ騒ぎとニアミスをくりかえしながらも、それぞれのパリの旅を楽しんでいた―かに思えたが、ついにツアーの二重売りがバレそうになって、さあ大変。
さらに「王妃の館」に秘められた太陽王「ルイ十四世」の愛の行方をからめて、物語は十七世紀と現代とを縦横無尽に駆けめぐる。
思いっきり笑って泣いて、ついに感動の大団円。
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女性月刊雑誌『メイプル』の1998年(平成10年)5月号から2001年(平成12年)4月号に連載されたコミカルな作品、、、

2015年(平成27年)に「水谷豊」主演で映画化され、2017年(平成29年)には宝塚歌劇団で舞台化されているらしいです。


パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、「ルイ十四世」が寵姫のために建てたという「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」… 今は様々な著名人が泊まった一見さんお断りの高級ホテルとして鎮座する、、、

しかし、実は現在の懐事情は芳しくない… そこへ日本の倒産寸前の旅行会社がホテルを抱き込み、ダブルブッキングのツアーを企画・実行する。

昼に滞在する客(光(ポジ)ツアー)には10日間で150万円、夜に滞在する客(影(ネガ)ツアー)は19万円という格差があるツアーをダブルブッキングがバレないように両方の組が鉢合わせしないようにして行ったのだ… そんなことを知らずにツアーに参加した客は、みな訳ありや癖がある者ばかり、、、

物語は、取材のためにツアーに参加した作家「北白川右京」の創作などの、「ルイ十四世」と愛妾「ディアナ」、そして2人の息子の「プティ・ルイ」の話を織り交ぜながら、ドタバタ劇が繰り広げられる。


久しぶりに読書しながら笑えましたね… 面白かった、、、

泣くほどではなかったけど… 様々な過去を抱え、それぞれの目的を持ってダブルブッキングのツアーに参加した個性的なメンバーたち、顔を合わすことはなかったはずの光(ポジ)ツアーの7人と影(ネガ)ツアーの8人がニアミスを繰り返し、そして、ハプニング等にも助けられ、ツアコンの2人を含め次第に打ち解けて、同じ目的に向かって将来を生きて行こうとする展開は人情劇的で良かったですね。

「浅田次郎」の作品って、幅広いですねぇ… 三作品、続けて読みましたが、それぞれ全く違う作風なので、同じ作家の作品とは思えないくらいです。



以下、主な登場人物です。

【光(ポジ)】ツアーメンバー

「桜井香」
 上司との不倫の末、リストラされた38歳のOL。
 リストラ奨励金を使い切るためにツアーに参加

「北白川右京」
 ベストセラー作家。
 長篇小説『ヴェルサイユの百合』執筆のために、隠密旅行に。

「早見リツ子」
 精英社の文芸編集者。
 リフレッシュ休暇を使い、北白川右京の書下ろしを完成させるべく、グリップ旅行に。

「下田夫妻」
 工場経営が破綻し、数億の借金を抱える中年夫婦。
 心中目的で有り金はたいてパリへ

「金沢貫一」
 バブル崩壊後に成り上がった不動産王

「ミチル」
 元銀座のホステス。現在は貫一の恋人

「朝霞玲子」
 <光(ポジ)>ツアーを引率する敏腕ツアコン。社長と愛人関係にある


【影(ネガ)】ツアーメンバー

「近藤誠」
 謹厳実直。猪突猛進型の元警察官。
 韓国旅行での上司や同僚たちの醜態を見て退職。
 "世界を見聞するため"に参加。45歳

「クレヨン」
 本名・黒岩源太郎。ゲイ・バーに勤める美形。
 フランス人の元恋人を探している

「丹野夫妻」
 全身黒づくめの謎の夫婦。実は世界を股にかけるカード詐欺師。

「岩波夫妻」
 元夜間高校の教員とその妻。
 夫はかつてゼロ戦乗りだったという過去を持つ。

「谷文弥」
 音羽社の文芸編集者。北白川右京を追ってパリへ

「香取良夫」
 文芸四季社の文芸編集者。谷と結託してパリへ

「戸川光男」
 <影(ネガ)>ツアーを引率するツアコン。朝霞玲子はかつての妻。
 今は娘と二人暮らし。


十七世紀「王妃の館(シャトー・ドウ・ラ・レーヌ)」をめぐる人々

「ルイ十四世」
 フランスの太陽王

「プティ・ルイ」
 本名ルイ・ド・ソレイユ・ド・フランス。ルイ十四世の息子

「ディアナ」
 プティ・ルイの母。ルイ十四世寵姫だったが、ヴェルサイユを追われる。

「ムノン」
 宮廷のグラン・シェフ

「ジュリアン」
 ムノンの娘婿

「マイエ」
 マ・ブルゴーニュの店主

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>大衆文学あれこれ
感想投稿日 : 2023年2月27日
読了日 : 2019年3月15日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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