北極圏一万二千キロ (文春文庫 178-3)

著者 :
  • 文藝春秋 (1979年7月25日発売)
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「植村直己」の探検記『北極圏一万二千キロ』を読みました。

『青春を山に賭けて』、『エベレストを越えて』に続き「植村直己」作品です。

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グリーンランドからカナダを越えてアラスカまで、北極圏をたったひとり犬ゾリで走り抜けた男の記録。
極限に挑む人間離れした探検に、人間らしいやさしさがみなぎるドキュメント。
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一日中、太陽が出ない真っ暗闇の季節(逆に、一日中、太陽が沈まない白夜の季節もあります)、汗も凍るような寒さ(氷点下50℃!?)に身体が順応せず、寒さに凍えながら、

雪のない峠を犬橇で無理矢理越えたり、

薄氷を割り冷たい海に浸り、

犬に逃げられたり、

食料を野犬に食べられたり、

白熊に襲われそうになったり、

と、様々な苦難を体験し、挫けそうになりながらも、強い精神力で、北極圏の一万二千キロを犬橇を使って単独で走破した、1年半にも及ぶ冒険の記録です。

本当に「植村直己」の精神力には、驚かされるし、自分も強くなりたいと感じますね。


精神面だけじゃなく、食に関する逞しさも、「植村直己」の強みなんでしょうねぇ。

カリブーを銃で仕留めて、その場で食べたり、アザラシやセイウチ、クジラの凍肉を生で食べたり… その他にも、じゃこう牛、兎、犬、白熊、雷鳥、カラス等々、極地に住む生き物はなんでも食べる。

なかなかできないです。

食に関しては、実際に食べたモノも衝撃的でしたが、1910年に南極点を目指した「アムンゼン」(ノルウェー)と「スコット」(イギリス)に関する文章も印象的でしたね。

「植村直己」の価値観がわかります。

「二人は南極点を目指して同時に出発するのだが、アムンゼン隊が、犬橇の名手を集めてこれを十分に使いこなし、最後にはその犬を共食いさせながら極点に到達したのに対し、犬橇の使い方を知らない(あるいは知ろうともしなかった)スコット隊はスキーと徒歩で極点を目指し、サポート隊が雪上車とシベリア産の馬を用意してこれを支援した。しかし、雪上車は寒さに動かなくなり、馬も使いものにならず、人力によって極点には達したものの、帰路、全員死亡してしまうのだ。
アムンゼンとスコットのやり方を比較してどちらが良い、どちらが悪いというのではない。しかし私にとって冒険といい、探検、調査といっても生きて還らねば何の意味もない。特攻隊ではないのだから。
一番強く思うことは、フランクリンはなぜ近くにいたエスキモーに助けを求めなかったのか、スコットはどうして馬を食わなかったのか、ということなのだ。(後略)」


本当に、この逞しさが羨ましいですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: <読む>スポーツ・登山
感想投稿日 : 2022年5月6日
読了日 : 2012年1月27日
本棚登録日 : 2022年3月11日

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