アーウィン・ショーを訳していた人といった程度しか知らなかった常盤新平さんであるが、本書に登場してくる翻訳者の面々に関心があったことから手に取ってみた。
本書は小説であるから、実話そのままではないだろうが、登場する翻訳家も実名は出ていないが1960年前後の早川書房周辺の人たちだし、翻訳した作品の大体の記述もあるので、多分あの人がモデルかなあと推測するのは、とても楽しい。
翻訳家を目指してはいるが、まだまだ先の見えない若者だった作者の前に登場する師匠や先輩、同輩の人たちはほぼ変な人たちであるが、ほのぼのするものから不思議なもの、しんみりするものと、様々なエピソードが描かれる。
また、本当に翻訳家として一本立ちして、愛する家族と生活していけるか、揺れ動く真情には共感させられる。
アメリカ文化、文学が眩しかった時代。アメリカの小説に出てくるハンバーガーがいかなるものか話し合うエピソード、著者と恋人との借家に関する記述、翻訳料に関するやり取りなど読むと、当時がまだまだ貧しい時代だったこと、でも何とかなるさという希望が持てた時代でもあったことが伝わってくる。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月23日
- 読了日 : 2021年1月23日
- 本棚登録日 : 2021年1月23日
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