1930年発表であるから、今(2021年)から90年以上前の作品。現代風の洗練された作風ではないが、フレンチ警部の一歩一歩事件の真相解明に向けて進んでいく粘り強い捜査活動の描写に、読んでいて徐々に同調させられる。
アイルランドのベルファスト周辺、イングランドでは、ロンドンからダムフリース、カースル・ダグラス、ストランラーへと向かう鉄道沿線、またフレンチと今回その相棒役となる北アイルランド、アルスター警察署のマクラング部長刑事とが汽車や自動車で裏取りのために動き回る場面や、他の登場人物がスコットランド沿岸をランチで周遊する説明がなされたりと、さながらトラベルミステリーのようで、当時の読者にとっては観光案内としても楽しめたのだろうな。
強固なアリバイをどう崩すのかが推理の焦点になるのだが、いくら粘り強い捜査といっても、そう都合良く目撃者が出てくるものか、また犯行方法そのものについては正直?のところもあるものの、フレンチの推理過程はかなり読み応えがあったし、犯人に対するカマの掛け方にも頷けるものがあった。
創元推理文庫の年一回の復刊フェア、クロフツの作品が毎回1冊ずつ復刊されていて、都度購入しているのだが、創元で刊行されていた作品をコンプリートするのが楽しみ。ただ、一体あと何年かかるだろう?
どうか復刊事業、これからも続きますように!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年10月9日
- 読了日 : 2021年10月9日
- 本棚登録日 : 2021年10月9日
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