孔雀屋敷: フィルポッツ傑作短編集 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2023年11月30日発売)
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感想 : 6
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 フィルポッツの新訳、しかも短編集というのに驚き。
 乱歩の選ぶベスト10にフィルポッツの『赤毛のレドメイン家』が選ばれていて、自分もそうだったが当時のミステリ好きならば大体読んでいたのが一昔前、いやもう二昔前のこと。『だれがコマドリを殺したのか?』が新訳で刊行されたときにも「今、フィルポッツ?」と思ったのだが、今度はまさかの短編集。時代で言えばホームズの頃なのだから、今読んだら古めかしいのではないかと若干危惧しながら読み始めた。

 新訳ということで訳文、訳語自体に古さを感じさせないこともあり、全体としてとても面白く読むことができた。小説家としてミステリー以外にも多数の作品を書いているので、濃密な風景描写や心理描写にも味わいがあり、小説としての読み応えがある。

 過去の出来事をまざまざと見ることのできる不思議な能力を持つ女教師の、過去と現在が交叉する体験を描く表題作『孔雀屋敷』、西インド諸島バルバロス島で起きた三人の変死事件を調査する部下の調査報告を基に、鮮やかな推理で驚きの真相を解明する『三人の死体』はミステリーとしての面白さに惹かれたし、何か一つのことに偏執的に取り憑かれてしまう性癖を持った男の告白「鉄のパイナップル」は、この時代にこんな性格の人物をこんな形で描いていたのかとの驚き!でお気に入り。
 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月7日
読了日 : 2023年12月1日
本棚登録日 : 2023年12月1日

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