アルスエレクトロニカの挑戦: なぜオーストリアの地方都市で行われるアートフェスティバルに、世界中から人々が集まるのか

著者 :
制作 : アルスエレクトロニカ  博報堂 
  • 学芸出版社 (2017年4月28日発売)
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オーストリア、リンツにおけるアルスエレクトロニカは、「アート、テクノロジー、社会」というコンセプトを提唱しており、これは2021年現在も直面している問いである。

世界と比べて圧倒的に恵まれている日本において、このような次の社会を模索する取り組みを地域から発信していく使命を強く感じる。

これまで一握りの人にしかできなかった芸術と言うものが、デジタルや技術を介してみんながもっと身近に体験できる、だからこそ、推進しない手はない。

ちょうど、全く違う方から、18世紀のアル=ケ=スナンの王立製塩所の話を聞いたばかりであった。
現代と違い、18世紀の技術と言えば建築だったのではないだろうか。社会におけるテクノロジーの意味を知ること、それは純粋にテクノロジーに興味がある開発者たちとアーティストとの違いだと思う。最も重要なアプローチはオープンであること、科学的探求と芸術的表現を同時に行えること。他分野から集まった我々は、メンバー同士互いの専門領域と親しみ、一人ひとりの貢献と影響による成果を作り出している。テクノロジにできることを考えるだけでなく、その先に、人間や社会の本質を捉えようとするフィロソファー哲学者的な側面が大切になる。テクノロジー主導ではなく、人と社会を捉えるアート的思考が主導するかたちで、その違いの協働が必要である。

私がやりたいのは、こういった社会思想に関わることで、今やっているベンチャーでもどうしても思想や哲学に傾倒してしまい、なかなか儲かるビジネスモデルを作れずに苦労している。

18世紀のアル=ケ=スナン、30年前から着実に進めてこられたリンツ、現代に生きるわたしたちは、これらを、”当然”、”超えなければ”、ならないと強く思いました。
この視点からみた、「地域創生」をやれないか、と自らに問い始めています。
目新しい技術に飛びつくわけでは有りませんが、中央集権的な社会から、自律分散型社会を目指していくことも一つの選択肢となりうるのでは、或いは、それこそがポスト・資本主義の社会なのではないかと思い始めています。
本当の意味での、多様性を認め、ゆるくも、確実につながっている社会ではなかろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Society5.0
感想投稿日 : 2021年8月25日
読了日 : 2021年8月25日
本棚登録日 : 2021年8月18日

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