久しぶりの黒岩重吾氏の小説、読みごたえは十分です。そしてどれほどたくさんの資料を読み込まれ勉強されて書かれたのかもずっしりと伝わってきます。なにしろ6世紀、謎の・・・と接頭語が付く年代ではないものの、文献資料はあまりに少なく発掘資料も雄弁には遠く及ばずの古代の物語。現在も継体天皇の出自については諸説紛々、不在説まである中ですが、本の中では確かに継体天皇も蘇我の稲目も実在しその時代を生きています。
最大の謎とされる都の所在地問題と即位の経緯、なぜほかの豪族が取って代われなかったかという現在の感覚からすると理解しがたい氏族感情、生活の方法、地理、連と臣の違い、渡来氏族と大陸の情勢などなど、断片的な知識が物語の中で整理され統合されて、確かにあったこと(かもしれない)として立ち上がってきます。この物語は黒岩重吾氏の古代史解釈のひとつの答えなのです。その答えは今読んでも見事というほかありません。人物設定も面白く、少し持ち上げすぎ?と感じる部分もありますし、異論反論違和感を含めて、古代史ファン必読、と感じました。シリーズ、もう一度読み直してみよう!
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年3月12日
- 読了日 : 2023年3月11日
- 本棚登録日 : 2023年3月11日
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