物語は、昭和の頃。刑務所で聴いた落語に憧れて出所後にその落語家に弟子入り志願するところから始まります。
最初はイヤイヤでしたが、おバカな主人公の圧に根負けして許可。
ここからストーリーは流転を重ねます。
ぜんぜん乗り気ではなかった八雲師でしたが、なぜ落語を教えようとしないのか。落語と共に心中しようとしているのか。その秘密が明かされます。これが物語の前半部。
後半では、多くの軋轢を経て助六の名を継承し落語家として真打を任されるまでに成長した与太郎の姿が描かれます。
与太郎が立派に認められるまでの過程でいかに落語を存続させるか、というテーマが柱となっています。
心に影があり、落語を自分の代で終わらせようとする八雲。それとは対照的に落語に情熱を燃やす与太郎。その与太郎の姿に助六の面影を見る八雲。そして八雲と助六の間にあった事件とその顛末を、創作落語を作ろうとする作家が嗅ぎ回る。
僕は当初、八雲は与太郎を上辺の親切心だけで実は飼い殺しにして何も教えず与太郎をダメにしようと薄情なことを考えているのではないかと心配でした。
しかし、与太郎の元アニキ分が現れた際に、与太郎の親代わりであることをハッキリと告げて、与太郎の寄席に招待します。予定の時間をオーバーしているのに、熱心に落語をする与太郎の姿を温かい眼差しで見つめる八雲の目にはたしかに親心を感じ、彼が元々持っていた人情を垣間見た瞬間でした。
これが昭和の江戸っ子の人情ってやつなのでしょうか。
僕は、アニメ版の方から入りました。漫画版を読むとアニメ版のキャストの声がセリフを読むだけで聞こえて来るようでした。それだけ恵まれた作品なのでしょうね。
ところで、本作に触発されて、僕自身も創作落語を一席作ってみました。実体験(ネットストーカー被害)×IT(ソーシャルエンジニアリング)というテーマで手前味噌ですが、そこそこ書けていると自負しています。
よかったら読んでください!
【ネットに生息するらしい女形について】創作落語を一席やってみた。
https://note.com/nemuisan/n/ne85ee0391b15
- 感想投稿日 : 2020年10月4日
- 読了日 : 2020年10月3日
- 本棚登録日 : 2020年10月3日
みんなの感想をみる