久々に星5の昨日に巡り会えて嬉しい…!
長く生きられない病を患った妻と、それを看病する夫の物語。
そんなふうに聞くと、へそ曲がりな私はこの本を手に取らなかったかもしれない。あ、感動の物語なのね、と。
そうではなくて、タイトルそのままのお話で、死に向かっていくひとと、その周りの人たちの距離感のお話。
記憶に残っているのは、「死の瞬間を、大事な時間のように捉えたくない」「マラソンをしているとき、テープを切る瞬間は特別かもしれないが、その瞬間を見守っている人たちだけが選手にとって大事な人ではないだろう。練習に付き合った人、スタートの背中を押してくれた人、沿道で応援してくれた人、どの人も大事に違いない。」という言葉。
死ぬ直前や死んだ後は、家族のことを考えてると思われがちなのは、なぜだろう。仕事のことは死ぬ直前や死んだ後は考えなくなるって思われがちなのは、なぜだろう。
大事な度合いやベクトルは違っても、肉親や長く連れ添ったパートナー以外の自分を取り巻くたくさんの人へ、それぞれ違った思いを持っている。
つい昨日まで、手を上げて声を掛け合っていたのに、死んだ途端に、手を合わせなきゃならなくなる。仏壇に声をかける時、なぜか敬語になってしまう。遠くに行ってしまう。
だけど時間と共に、また故人との距離が縮まったりする。
多くのことを考えさせられたし、つい先月身内を亡くした身としては、死に直面することについて、より身近に感じられて、わかる、と何度も頷いてしまった。
大病を患った妻が苦しみに悶える様などが描かれていない分、現実とは違うところもあると思う。
実際の闘病生活では痛みや苦痛から家族に当たってしまったり、看病する側もいらいらを募らせてしまう部分もあると思うので。
それでも深く考えず何気なくこの小説を手に取って良かったです。
優しいお話だし涙も出たけど、感動を誘うことを目的としていない感じがして、すごく好きでした。
- 感想投稿日 : 2022年8月27日
- 読了日 : 2022年8月26日
- 本棚登録日 : 2022年8月26日
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