ロジェ・カイヨワ『戦争論』 2019年8月 (NHK100分de名著)

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  • NHK出版 (2019年7月25日発売)
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NHK
○内容
・戦争そのものの研究ではなく戦争が人間の心と精神といかにひきつけ恍惚とさせるかを研究したものであった
・戦争というものが単なる武力構想ではなく破壊のための組織的企てである
・文明は平和の産物であるからだ、とは言え戦争は文明を表出している
戦争は 文明が発達するほど野蛮 で破滅的 になってくる
・原始的戦争から 貴族戦争 国民戦争
やる気のある人が集められ戦争

・大きな転換は産業革命
武器大量生産、労働者も工場も増え産業経済は拡大
組織的破壊こそ新規事業の最大の保証、国の経済活動が促進される
・様々な地方から工場へ来た希薄な個人を結びつけたのは言語
同じフランス語話すという仲間意識が生まれ、 フランス国民というアイデンティティーが個人の中に確立されたいわゆるナショナリズムの誕生
国家のために進んで犠牲を払おうとする
国家のナショナリズムが高まると国家は国民の意識を統制し、 国家のために死ぬことが国民一人一人の生きる意味であり、生きた証であると意味づけた

・戦争と祭りには共通点がある
騒乱と同様の時期であり、多数の群衆が集まって浪費経済を行う時期である
非生産的、何も生み出さない
平常の規律を一時中断すること
・人は祭りで味わった恍惚感を忘れらず来年の祭りを求める
戦争においても人は同じような恍惚状態に陥るため 再び戦争を求めてしまう
・作家ユンガーの戦争体験から
ユンガーは地獄のような戦争から生き抜いた 非人間的状況こそが近代文明がもたらした新しい戦争の形であり、その残酷な秩序のなかで人間は確固とした地位を占めることができる
・戦争という恐ろしい計画に 機械のような精密さを持って全ての人間と道具が従属してしまうという現象にユンガーは美を見いだす
戦争を全面的に受け入れることこそが人間の栄光だと考え、戦争の中で自分の存在を正当化したユンガーは、戦争信仰者となっていた
・戦う者は費消され、まばゆい光に目のくらんだ造物主となる
まさに戦争のめまいを体験したユンガーは、戦争がもはや人間の領域を超え、神話的な現象になったのだと指摘した
・ 破壊の快感、その快感にあらがうことはできない、 人を殺すことが欲求解消の手段となり、快感を覚えることがある
自分が殺されそうになるのは恐怖があるが、他人の人格を蹂躙じゅうりんする快感が勝る

・ 核兵器の登場により兵士は何の意味も持たなくなる、国民の枠も崩れ国家は事実性を失う
カイヨワの結論
・ 物事をその基本において捉えること、すなわち人間の問題として、言い換えでは人間の教育から始めることが必要である
とはいうものの、このような遅々とした歩みによりあの急速に進んで行く絶対戦争を追い越さなければならぬのかと思うと、私は恐怖から抜け出すことができないのだ

感想
戦争を止めるには何だろうと期待したが、平時と戦時の区別がない昨今では難しいことがわかった

前に世界史を勉強している子供と戦争の原因について考えたことがある
土地、お金、宗教が主な原因で、強い国が幸せに暮らしていた国に一方的に攻めたりして不条理なことが多く、不均衡な世界だから戦争は無くならないよねと話し合ってた

しかし現代はそんな簡単な理由でない
攻め込まれる前に攻め込む、敵になる前に攻め込む、解釈の違いでどうにでもなったりする
テロもなくならないし
原爆国という過去を忘れず、命は大事だよと教育をしていく行動を継続していくことを地道にやるしかない

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文(心理・歴史・思想)
感想投稿日 : 2022年5月29日
読了日 : 2022年5月29日
本棚登録日 : 2022年5月27日

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