神曲 地獄篇 (角川ソフィア文庫)

  • 角川学芸出版 (2013年11月22日発売)
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5

イタリア古典文学の最高峰

作者ダンテが自分を主人公に描いた夢物語小説

1265年フレンツェに生まれたダンテは9歳の時にであったベアトリーチェに恋し、その愛が彼の創作活動の源となった。

彼はわざわざ市民たちが読みやすい口語体のイタリア語で『神曲』を13年かけて書き上げた。完成直後に亡命先のラヴェンナに没す。他にもベアトリーチェを称えた最初の作品を残している。

ーーーー地獄篇あらすじーーーーー

地獄はイタリア語で”inferno”(インフェルノ)といい、一応死んではいない若いダンテ視点なので、時々この恐ろしい世界にビビりながらすすんでいく。地獄の全体像としては漏斗のように、上が広く下に行くほど狭い階段上状に9つの谷が形成されている。1番下には最も罪の重い「裏切り行為」を働いた者たちがおり、その中心にいたのがルシフェル。ルシフェルが地上に落とされた衝撃で開いた大穴が「地獄」の世界で、その衝撃で反対側に持ち上がってできたのが「煉獄」という感じ。

自分が目指す道が分からず将来に不安を抱きながら悶々と暮らしている平凡な青年ダンテ。ある日突然「地獄」に飛ばされてしまい、目の前に現れたのは憧れの大作家ウェルギリウス。彼がダンテを案内して罪を償う者、世を偲んで悲しむ者、己の思考に磨きをかける者、死者の世界を巡り世界の深淵を目にする。

地獄篇はウェルギリウスと煉獄までいくまでを描いている。案内してもらう道中に世界に名を残した偉人たちに出会っていく

ex)アレキサンダー大王、カエサル

ーーーー煉獄篇のあらすじーーーーーー

地獄→生前の罪を、罪の重さに応じた刑罰で永遠に罰せられる所

煉獄→生前の罰を、罪の重さに応じた刑罰で償えば天国へ登れる所(キリスト教の中でもカトリック独特のもの)

実は「煉獄」は旧約聖書には載っていないもので、あくまでカトリックの”聖伝“として受け継がれている概念

プロテスタントはこれに対して聖書に忠実なので煉獄の存在を基本的には否定する。

生前にカトリック教会の言うことを聞けば天国とまではいけないまでも煉獄にはいけるよ、という感じで都合の良い概念だったそう。

イタリアでは中学で『神曲』を3年くらいかけて読むくらい難解だとか。

ダンテ本人はこの書を”Commedia”(喜劇)と単に名付けたが、ボッカチオが”Divina Commedia”(神聖な喜劇)と付け足し、『神曲』と訳したのは森鴎外が最初と言われる煉獄はイタリア語で”purgatorio”(プルガトリオ)

煉獄では地獄とは逆に「下から上に山に登っていく描写」がされる

煉獄で自分の罪の償いをしながら山に登るのだが、その際に彼らの家族や知人が現世でその魂のために祈りを捧げてくるとそのぶん早く頂上に辿り着けると言うシステムにもなっている

煉獄で会う人たちにはダンテが目を覚まし、現世に戻ったら彼らの家族に「もっと彼らのために祈ってあげて」と伝えてくれと言う約束を交わしながら上に登っていく

途中天使が現れてダンテの額に7つの「P(peccato/罪」を刻みます。この7つのPとは、高慢、嫉妬、怒り、怠惰、貪欲、大食、色欲を表しており、煉獄にいる魂は山を登りながらそれらの罪を順に清めていく。ダンテの額のpも次第に消されていき、体が軽くなっていく

ーーーーー天国篇のあらすじーーーーーー

煉獄の頂上でベアトリーチェと出会い、案内役はウェルギリウスからベアトリーチェに移る。

天国は”paradiso”

天国篇はダンテ自身も言っていることらしいが、解読が本当に難しい。かなり神学的なことで、それに加え、天文学、物理学等の内容に精通していないとなかなか理解が追いつかない

天国篇ではベアトリーチェがダンテの疑問についてひたすら説明・講義を行うと言う形で進められるので時間がとてもかかると言うのも特徴的

天国は月光天、水星天、金星天、太陽天、火星天、木星天、土星天、恒星天、原動天、至高天の10の天界からなっている。ダンテは数々の疑問をベアトリーチェの説明を聞きながら紐解いていき、至高天で天使の群れのいるところに到達する。ベアトリーチェも元々はそこにいた人で、ダンテの案内が終わるとそこに戻っていく。

そこから先は聖ベルナールが案内役に代わり、ついにダンテは神の姿を一瞬垣間見ます。その姿は「言葉にすることができず、また記憶にとどめることもできない」姿。強い感動だけは残っているが、夢から覚めてもその具体的な内容が思い出せない。

ーーーー最後にーーーーー

ちなみに天国篇を案内するベアトリーチェという淑女は実在の人物で、ダンテが昔恋心を抱いていた女性の名前である。ベアトリーチェには許嫁がいたのでダンテとベアトリーチェはそれぞれ別の人と結婚するのだが、ダンテがベアトリーチェに特別な感情を抱いていたのは間違いない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 西洋文学
感想投稿日 : 2022年2月21日
読了日 : 2022年2月3日
本棚登録日 : 2022年2月20日

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