NHK出版 学びのきほん くらしのための料理学 (教養・文化シリーズ NHK出版学びのきほん)

著者 :
  • NHK出版 (2021年3月25日発売)
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アニミズム・わびさびはウチの台所にあふれている。

家庭料理の精神性を人々に気づかせたことが、土井善晴先生の、そしてこの本の偉業だと思います。
誰がつくっても美味しいレシピや、時短料理術、目新しい調理法などといったテクニック以外の部分である精神や思想。アニミズムやわびさび等といった日本の自然や文化と、かたや生活感満載の「ウチの台所」が直結するなんて今まで思いもしなかった。そういった高尚な考えはプロの世界、懐石料理や料亭の板前さんのもので、家庭料理とは無縁だと。

家事に追われる人は「そんなことより実用的な調理法をおしえてよ」と普通は思うのでしょうが、「でも土井センセが言うてはるんやから」と振り向かせるだけの親しみやすさが土井先生の強みです。

季節や風土、わびさびを感じながら、手間をかけず素材そのものを生かして食べること。キレイに整えた状態で食べること。料理をつくって食べるまでの行為全体を通して感じる「心の気持ちよさ」のあとに、「味覚の気持ちよさ」すなわち「おいしさ」はやってくるのかもしれないなと思いました。

土井先生の言説からあらたな気づきもありました。
肉は、繊細な和食文化では扱いきれないほどに快楽的なうまみがあり、それを禁じなければ和食文化は持続できなかった、ということ。
素材をいかすのであれば、味は「うけとる」ほかなく、むやみにコントロールできることではない、ということ。
なるほどなと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年10月28日
読了日 : 2022年10月28日
本棚登録日 : 2022年10月28日

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