誰かが手を、握っているような気がしてならない

著者 :
  • 講談社 (2008年3月20日発売)
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感想 : 21

誰かが私の左手を握っているような気がする。
手を見る。なんでもないようなただの神の手だ。動かしてみる。それでも誰かが、私の手を握っているような気がしてならない。その感触だけがある。弱く、不確かではあるが、そんな感触がある。気味が悪い。得体の知れなさを感じる。しかし、私にとって、得体の知れないものがあるという事がどれだけ救いであるか。私はその気味の悪さを抱きしめたかった。私は少し落ち着いて泣き止んだ。空を見る。青い。細い雲が幾筋か浮かんでいる。ああ私は孤独に憧れている。お前は孤独だと言って欲しい。神よお前は孤独だ、と。だから一緒にいてやると言って欲しい。しかし神にそんなこと言える者はいない。私が死んだみたいに言いふらした人がいたけどらどっこい生きている。私だって出来れば死にたい。私はただ存在しているだけの状況に全然慣れないね、なんでだろう、いっこうに慣れない。無限の時間に囚われていてなんとなく存在している状況に慣れない。

私は別に普通だと思ってた、自分が薄汚れているなんて考えた事がなかった、でも、真っ白な人達の前に出て始めて自分が薄汚れている事に気付いたんだ。

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感想投稿日 : 2019年12月10日
本棚登録日 : 2019年5月9日

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