エレジーは流れない

著者 :
  • 双葉社 (2021年4月21日発売)
3.40
  • (84)
  • (290)
  • (437)
  • (80)
  • (8)
本棚登録 : 2957
感想 : 361
3

今も、日本のどこかに、この子たちみたいな高校生がいるんだろうな。
アホなことばっか言って、でも将来に夢も希望もとくになくて、とりあえず学校行って。
卒業したらどーするんだろうなーと考えなくもないけど、答えが出るわけでもない。
そんなん考えたこともないって子もいたり。でもそういう子が案外その先を想像していたりもする。

さびれた温泉街。客足もない商店街。
通りを歩けばどこん家の子か、みんな知ってる。
惰性でやってるとしか思えないような店。
この先、どうする?
ここから逃れたくもなるし、背負うしかないっしょ、と覚悟を決めたり。

そういう生活のなかで、二つの謎が描かれる。
主人公 怜には二人の母がいる。
「おふくろ」と「お母さん」。
普段はおふくろの土産物屋で暮らし、1ヶ月のうち第3週だけお母さんのいる豪邸で過ごす。
でも、その理由を本人は知らない。聞けない。
なぜ聞けないのか? ジレンマを抱えながらすでに高校生。

そして町の博物館から盗まれた縄文式土器。
歴史的価値はよく分からないが盗難にあっても管理がゆるくて、この町のありさまが出ているようだ。
この事件に、、アホ男子たちがアホなことを言い出すよね?


人生って人って、夢や希望に輝いている人はごく一部で、よくある小説や映画みたいに事件やドラマティックな展開はそうそう起こらない。
そういう「普通さ」を、高校生たちの視点で書かれている。
……もちろん全くないと小説として成り立たないから縄文土器が出てくるわけだけど。

モヤッとしている怜に、脳みそが筋肉でできている竜人、明るい能天気な心平、繊細だけど自分の好きな道があるマルちゃん、このメンバーではマトモで将来後を継ぐ心積りの藤島。
てんでバラバラな5人だけど友だちっていいなー。
青春っていいなー。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年8月23日
読了日 : 2022年8月23日
本棚登録日 : 2022年3月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする