invert 城塚翡翠倒叙集 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2023年11月15日発売)
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感想 : 84
3

城塚翡翠シリーズ第2巻がようやく文庫化。待ってました!早速購入して読んだ。内容は、短め2編と長め1編のそれぞれ独立した3作品。どれも面白くて満足しました。

なるほど。
こういう形式を『倒叙』というのか。私個人では勝手に『刑事コロンボ型』と呼んでた(笑)それ以前に私が知っていた推理物は、ほぼ『犯人探し』だったので、刑事コロンボには大いにハマった。画期的だと感じた。
そして本作は『倒叙推理物』としてよく考えられていると思う。…と褒めておきながら、「刑事コロンボほどの感動(感心?)が無い。何故だろう…。

それは、"犯人への同調性の有無"にあると思う。刑事コロンボの犯人は、大多数がロサンゼルスに住むセレブたちだ。スキャンダルを揉み消したい政治家•自分だけ利益を独占したい経営者•浮気がばれて夫婦関係が破綻した芸能人など、基本的に"犯人の動機には同情する気持ちになれない人"がほとんどだった。その人達が物語冒頭に出て来て、一見完璧な殺人を犯す。その後で風采の上がらない刑事が完璧と思われた犯行の失点を見つけ突き崩す。
この違いは大きい。
特に本書では第1編と第2編では、倒叙で描かれるが故に"犯人の動機に同調したい気持ち"が芽生えてしまうこと甚だしい。さらに、本書の主人公はその美貌も含めて、"全てを持っている感"がハンパない。ヨレヨレのコートを着た冴えない風貌のコロンボと、ギャップという点では相通じるのかもしれないけど…。コロンボは"ハニートラップ"的な捜査はしないし。あ、出来んか(笑)
いずれにしても、"後味が悪い"感じになってしまうのが残念なんですよね。以前見た映画の「容疑者Xの献身」でも感じたこと。「これだけの能力があるなら、もっと巨悪と闘ってよ!」という気持ちになってしまう。もちろん一民間人殺しも"巨悪"なんだけど、ちょっと違うのではないかと。

…以下蛇足
第2話の舞台は小学校。非常によく取材して書かれていると思います。現代の『小学校教諭ブラック勤務の描写』は、100点満点で…まぁ80点以上あげてもいい。それくらい正確。合格です。でもね、これを物語の中の出来事としてそのままにしておいたら、この国の未来はないと思いますよ、マジで。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月6日
読了日 : 2023年12月6日
本棚登録日 : 2023年12月6日

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