希望が死んだ夜に (文春文庫 あ 78-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年10月9日発売)
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感想 : 224
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読む手が止まらず、一気読みしました。
表紙から青春ミステリーと思ってたら、社会の「貧困問題」がテーマでした。主人公である刑事から見た現在と、被疑者である中学生から見た過去の2つの視点で話は進んでいきます。

首吊り遺体のある現場から逃走するところを捕まった少女A。「同級生を殺した」と証言する少女Aこと冬野ネガだが、その動機を頑なに話そうとしない。何故ネガは殆ど接点のない同級生の少女を殺したのか。
主人公である真壁警部補は少年犯罪に詳しい女性巡査部長とコンビを組み、事件の真相を探っていく。

読み終わった後の後味は、正直重く、苦しいです。親子2世代に渡って抜け出せない貧困、世間の生活保護受給者への批判、貧困から抜け出す努力すらできない子供……制度1つで簡単に解決できない問題が次々と浮かび上がってきます。
ネガの気持ちを想像すると、涙が止まりませんでした。誰かのためにここまで強い決意ができる少女だったなんて、最初に抱いたおどおどしているネガのイメージからは想像もできませんでした。家が貧乏ではなくて、普通に友達がいれば、本来はあんな性格だったのかなと思います。

ネガだけでなく、登場人物の人物像もコロコロ変わっていくのが生々しくて面白かったです。人は色んな顔を持っていますし、自分では何気なく言った言葉が人を傷つけていたりする。
この本に登場する大人は巡査部長を除いてデリカシーがないというか、想像力が足りなさ過ぎですね(笑)だから出世と世話になった上司のことしか頭になかった主人公の成長には素直に感動しました。人に寄り添い想像することを覚えた主人公は、きっといい刑事になります。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年7月24日
読了日 : 2022年7月24日
本棚登録日 : 2021年6月14日

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