異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

  • 英治出版 (2015年8月22日発売)
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 グローバルに働くビジネスパーソンにオススメの本。各国の特徴を8つの指標で分析されています。

 ①コミュニケーション
  ローコンテクストvs
  ハイコンテクスト(暗黙の了解)
 ②評価
  直接的なネガティブフィードバックvs
  間接的なネガティブフィードバック
 ③説得
  原理優先vs応用優先
 ④リード
  平等主義vs階層主義
 ⑤決断
  合意志向vsトップダウン
 ⑥信頼
  タスクベースvs関係ベース
 ⑦見解の相違
  対立型vs対立回避型
 ⑧スケジューリング
  直線的な時間vs柔軟な時間

 特に参考になったのは、②のネガティブフィードバックの箇所。遠回しに批判的な意見を伝える国と率直に伝える国があり、このギャップによって下記のようなミスコミュニケーションが発生するそうです。
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【場面】
 仕事中のイギリス人上司とオランダ人部下の会話。
 遠回しに批判を伝える国→イギリス
 率直に批判を伝える国 →オランダ

【例1】
 イギリス人「あぁ、ところで‥」
 イギリス人の本心(次の話こそ本題だ)
     ↓
 オランダ人
 (次はおまけで、重要な話ではなさそうだな)

【例2】
 イギリス人「とても興味深いですね」
 イギリス人の本心(好きではありません)
     ↓
 オランダ人
 (いい印象を与えたぞ!)
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 お笑いのコントのようだが、異文化間や同じ人種でも歳の離れた世代間で発生しそうだと思いました。上司と部下で大きな認識のギャップがあれば、仕事の効率が悪くなるのが容易に想像できます。「イギリス人は遠回し過ぎでは?」と思うかもしれませんが、更に遠回しに匂わせるのが我々日本人です。(本書に記載はないが、大阪の「行けたら行くわ」は、日本人の私ですら遠回し表現に初めは勘違いしたほど曖昧。)
 意外だったのが、アメリカ。歴史的に多様な移民で成り立っている国のため、明快なコミュニケーションが基本。しかし、ネガティブな意見は直接的に言わないそうです。余談ですが、私はアメリカ人の英語の先生から「Let’s do lunch sometime!と言われても、連絡が来ると思っちゃダメ。社交辞令だからsometimeは永遠に来ない。」と教わりました。確かに、ネガティブな表現を遠回しに言うところ、大阪の「行けたら行くわ」と非常に似ています。

 最後に、本書で挙げられていた例え話が分かりやすかったのでご紹介します。
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二匹の若い金魚が、泳いできた年寄りの金魚とすれ違う。年寄りの金魚は彼らに挨拶して言う。
「おはよう、坊やたち、水の調子はどうだ?」
すると、若い金魚が言う。
「おい、水ってなんだ?」

水の中にいる時、つまりその文化の中に溶け込んでいる時は客観的に文化を見ることはしばしば難しい。
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 一つの文化しか知らない人は、地域差や個人差、その国の文化の明確な特徴に気づかないことが多いと述べられていました。ミスコミュニケーションという弊害があるかもしれないが、異文化同士が混ざり合った方が面白い発見がありそうです。

補足:
日本の独自ルールの中で、〝根回し〟も紹介されています。原文では、何と英語で表現されているのか気になりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス系
感想投稿日 : 2022年11月27日
読了日 : 2022年11月27日
本棚登録日 : 2022年4月23日

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