何もかもわかったような顔をしている主人公、久能整は誰の欲望から生まれた存在なんだろう。誰が彼を欲したのだろうか。
承認欲求、ひがみ、ねたみ、煩悩、差別、ジェンダー意識。現代人が抱える負の欲動をことごとく持たない彼は、きっと誰かのスーパーマンなのだ。
だが、ぼくはそこにほんのりと傲慢さも感じる。「私は関係ないです」という態度をとりながら、べらべらとカッコ付きの「正論」をしゃべる彼に、本当に人は救えるのか。
もちろん救えようが救えなかろうが、彼は何も思わないだろう。
そこで思う。もしこの漫画が「人のモノ化」「死の記号化」に反発する意図で描かれているとしたら、しかし逆説的にこの漫画こそ「人のモノ化」「死の記号化」を推し進めていないか。
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- 感想投稿日 : 2020年6月30日
- 読了日 : 2020年6月30日
- 本棚登録日 : 2020年6月30日
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