オオカミの護符

著者 :
  • 新潮社 (2011年12月15日発売)
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 川崎市宮前区土橋、田園都市線の鷺沼駅、宮前平の間に広がる地域です。この地域出身である小倉さんの家に昔からある一枚のお札、”武蔵国 御嶽山 大口眞神”に由縁して、関東一円に広がる御嶽講の大元へ旅を進めていきます。

 現在の田園都市線宮前平周辺は東京郊外の町として例外ではなく、瀟洒な戸建の分譲住宅、国道246や尻手黒川線沿線のファストフードが立ち並ぶ、典型的な郊外都市です。私も学生時代に住んでおりました。作者も今を生きる世代として、古い地域の慣習からは遠く離れた存在でした。

 そんな現代でもなお残る、古くからの御嶽講に加わり、その背後にある自然と人との深い関わり合いを辿っていくと、奥武蔵三峰山のオオカミ崇拝までたどり着きます。

 多摩川、多摩丘陵、奥多摩は自身の活動エリアでもあります。御嶽山、三峰神社に行った時も、”これ狛犬じゃないよね、オオカミだよね”と話していた内容を、奇しくも辿る形になりました。

 深い山で幕営したとき、何もない闇の向こうに気配を感じてしまい、自然を畏れるという感覚をいだいたことがあります。自然を制御すべき外界ととらえるのではなく、自然に中で生かされているという、本来の感覚を持つとき、山岳信仰、自然崇拝という関係が意味を持ちます。

 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 自然・山
感想投稿日 : 2013年11月4日
読了日 : 2013年11月3日
本棚登録日 : 2013年11月3日

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