6度目の大絶滅

  • NHK出版 (2015年3月21日発売)
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感想 : 28
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「地球上の誰かがふと思った。『生命の未来を守らねば・・』」
漫画『寄生獣』の有名な冒頭シーンだが、本書でも「人類は最も成功をおさめた外来種」であり、人がこの地上に出現した時、地球上の全生命体の「生存の条件が変わった」のだと説く。
大海原を躊躇なく漕ぎ出す狂気の遺伝子を持つ現生人類は、はるかに大きく頑強な大型生物やネアンデルタール人などを絶滅させ、人間の移動がなければ維持された種の地理的分離を元に戻し、あげく海の酸性化や地上での大変動に影響を及ぼす。
いま、これまでとは質的に異なる、何か特別なことが進行している。

しかし事はそう単純でもなさそうだ。
理論と現実が食い違うことはままあるし、予測が観測と一致しないこともよくある。
人間のやること、観測の限界は避けられない。
いまも「何千何万という新種が人知れず成育していて、正式な分類を待っている」のだ。
しかも、絶滅には時間のかかるものもあるし、破壊で失われた生息地の再生も考慮に入れる必要がある。
そう、自然はしぶといのだ。
「現実はいつももっと複雑」という一文は思い上がりをくじき、謙虚にさせてくれる印象的なフレーズだ。

それにしても本書は生命を新しい視点から見るきっかけを与えてくれる。
18世紀の終わりまでは、絶滅というカテゴリーは存在せず、まったく自明の概念ではなかったというのも、あらためて考えると驚きだ。
その転換となったのがマンモスなどの奇妙な骨の発見なら、現代ならさしずめ1隻のスーパータンカーやジェット機の出現が引き起こす転換も凄まじい。
グローバル化が数百万年かけて進行した地理的分離の巻き戻し、「新パンゲア大陸」の形成過程にあるという指摘は強烈だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年6月16日
読了日 : 2015年6月14日
本棚登録日 : 2015年6月16日

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