超心理学――封印された超常現象の科学

著者 :
  • 紀伊國屋書店 (2012年8月29日発売)
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感想 : 17
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広く一般読者を想定して書かれたものなのだろうが、何しろ読みづらい。後半にカール・セーガンの文章を引用しているが、その差が歴然としている。また、あまりにも著者へ安直な電話が多いので、HPにこういうFAQを載せたとかの報告が多い。自称能力者に対しては、結構な課題を出して、できるようになったら連絡して来いという。研究室の実験では偶然平均をわずかに上回るだけでも成果があったとされるのにもかかわらず。超心理学がいかに科学的かと力説する一方で、監修したドラマでは、見映えを考慮して実験で使う目の覆いをはぶいたりもする。

科学の先端は、常に不確定なグレーの状態に挑んでいるものだが、超心理学以外の科学ではもっと少ない実験で想定している前提の見直しを行っていると思う。しかし、ESPの存在確認や能力者探索のための研究に終始している印象。

ESPの発現に社会的状況が深く関わっていることを示すヒツジ・ヤギ効果を調べた実験も、いわば存在確認で、どのようにしてESPの知覚が得られるのかの解明はない。この分野では同じ実験者が再実験しても同じ結果が再現されないことが多くあるとか、能力者が実験に関与するだけで、スコアが高くなるとかなかなか難しい。

集合無意識が乱数発生器に偏りを生じさせるところは、昔からよく言われる『張り詰めた空気』という言葉を思い出した。 また、視野検査に使われる機械はうまく工夫すると予感実験に応用可能かも。 下降効果も、超心理現象恐れた人類が実験を失敗に導くとか、実用情報の加味などで説明してるが、単純に新鮮さが失われただけでは?

質問してきた受講者に著者が、「霊魂なんて持ち出すと科学的でないからダメだ」というくだりを読んで、小林秀雄ならどう考えるだろうなと考えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年5月8日
読了日 : 2012年12月16日
本棚登録日 : 2013年5月8日

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