リニア中央新幹線をめぐって――原発事故とコロナ・パンデミックから見直す

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  • みすず書房 (2021年4月10日発売)
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まず、こんなに電力を浪費する乗り物だと思わなかった。
東京から大阪までをリニアは新幹線より3分の1の時間で到着するが、そのためには5倍のエネルギーを必要とする。
高速になればなるほど空気抵抗や機械抵抗が余計にかかるわけで、さらに磁気抗力も加味すると、仮に新幹線と同じ速度で走っても2倍のエネルギーを消費する。
原子力発電の電力供給が必須な理由がよくわかる。

東京-名古屋間の90%以上がトンネルで、その中を時速500kmで飛ばすのだから、火災は言うに及ばず、ボルト1つ外れただけで大惨事になるわけで、乗る人を選ぶよな。

もともとはJR東海の全額自己負担で始まったこの計画が前に進み始めたのは、無担保で3兆円が借りれて、30年返済が猶予される国策プロジェクトに変わったから。
いまさら引き返すに引き返せないほど、どっぷり頭まで浸かっちゃっているが、果たして採算がとれるのか、見通しは暗い。

仮に静岡の川勝知事がすんなりOKを出したとしても、トンネル工事が順調に進むとは思えないんだよな。

コロナ禍による需要減少と相次ぐ自然災害で、不採算路線の整理・縮小が計画されているが、東日本大震災の例を見ても、地方のローカル線を継続する意味は大きいんだけど、公益として優先されるのはリニア中央新幹線の方。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年8月11日
読了日 : 2021年8月11日
本棚登録日 : 2021年8月11日

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